2019 Fiscal Year Research-status Report
会社法上の債権者保護規定を通じた従業員の保護に関する研究
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17K03468
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高木 康衣 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (60435120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 会社法350条 / 中小企業 / 債権者保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は会社法350条及び会社法22条に関わる研究と成果発表を中心とする予定であったが、本務校における業務(熊本件における中小企業の事業承継に関する調査プロジェクト)との関係で、会社法22条に関わる研究については、資料収集と分析は進めたものの、成果発表を行うことはできず、その他の債権者保護規定の関係での研究成果の公表、会社法350条に関する研究成果の途中報告を行うにとどまった。 具体的には、中小企業における債権者保護について触れる論稿として、「所有と経営の分離のない株式会社におけるコーポレートガバナンス」を、韓国の圓光大学・圓光法学35巻4号(235-251頁)において公表した。年度内に公表が終了したものは以上であるが、会社法350条に関連する判例評釈については4月1日刊行の金融商事判例1588号2-7頁に公表している他、4月28日出版予定の中央大学丸山秀平教授・近畿大学藤島肇准教授・帝京大学首藤優准教授との共著による『全訂株式会社法概論』(中央経済社)の担当箇所において、会社法22条その他債権者保護制度に触れている。 また、関連する報告として2019年11月4日18時10分より開催された早稲田大学商法研究会において、名古屋高判平成30年4月18日についての研究報告、2019年11月29日の中国・上海大学法学院におけるシンポジウムにおいて「所有と経営の分離のない株式会社におけるコーポレートガバナンス」報告、2020年1月25日14時より開催された九州産業法研究会において「会社法350条の責任―代表取締役の不法行為の範囲について―」報告、2月29日14時より大阪大学中小科研において「会社法350条の責任―代表取締役の職務執行の範囲について―」報告を、それぞれ行っている。会社法350条に関する二つの研究報告の成果は、令和2年度11月出版予定の論集に寄稿予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年度の研究実績概要報告における平成31年度の推進方策では、会社法22条(商法18条)に関する情報収集・分析・公表と、会社法350条の情報収集・分析・公表を行う予定となっていた。しかしながら、本務校における熊本における事業承継プロジェクトとの関連から、会社法22条(商法18条)に関する研究については、情報収集・分析については進めているものの、本来予定していた熊本法学における公表が間に合わず令和2年度での公表に持ち越すこととなり、また、会社法350条についても同様であるため、やや遅れていると評価した。 そのため、平成31年度(令和元年度)の実施状況は、 4~10月 会社法22条(商法18条)その他債権者保護規定に関する事案・文献の収集 11~3月 会社法350条に関する事案の分析結果の研究会での発表、研究成果の執筆、公表 となった。 会社法22条(商法18条)の成果公表は、平成29年度からの積み残しであるためこの部分については「遅れている」と言わざるを得ない。会社法350条とその他債権者保護に関する研究は進めており、令和2年4月1日には、350条と関連する判例研究として「一部株主に招集通知を欠き偽造委任状による総会決議に関与した代表者の不法行為責任」を金融商事判例1588号2-7頁において、公表している他、令和2年4月末に成果物の公表の一部が決まっていること、それ以降も成果の公表自体は順次実施可能な状況にあるのでそれほど大きな遅れが生じているとは言い難いが、全体として「遅れている」との認識を有している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、研究成果の公表を進めていく。 具体的には会社法22条(商法18条)に関する判例研究については、令和2年度秋発行予定の熊本法学に寄稿を予定している。なお、本年6月に報告を検討していた九州法学会について、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いその中止が決定したため、これに代えて他の研究会等における報告を検討する必要がある。 もっとも、新型コロナウイルス感染症拡大の状況が改善しない場合、今後もその実施が危ぶまれる点は否めない。そのため、研究会自体のオンラインかは不可能としても、個別の研究協力者に対し、オンラインでの意見交換などを通じて公表前の作業を進めていくことを検討している。 また、秋に開催予定である私法学会においても、本研究に関連する会社法350条に関するテーマでの報告申請を行っている。現時点では6月の理事会での審議前であるため、報告申請が却下される可能性が存するが、学会報告に向け、先に述べたようなオンラインでの意見交換などを通じて準備を進めていきたい。あわせて、私法学会報告前に、他の研究会での報告も検討している。また、本研究と私法学会での報告に関連して、令和2年度11月に刊行予定の論集への寄稿については、すでに執筆作業に入っているところではあるが、ひき続き進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度後半、出張を予定していたものについて、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中止となったことから、次年度に繰越となっている。 なお出張自粛期間が継続する場合には、それに代えてオンライン会議への参加が増えることが予想されるため、IT環境整備のための費用として充当する予定である。
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