2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける監督義務者責任の比較研究―日本法への示唆を求めて
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17K03472
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Research Institution | Shobi University |
Principal Investigator |
崔 光日 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授(移行) (60360880)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 監督義務者責任 / 監護人責任 / 法定代理人責任 / 親族後見人責任 / 責任能力 / 無過失責任 / 公平責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度には、2017年9月4日から8日まで、2018年2月21日から24日まで韓国(ソウル)を訪問し、2018年3月3日から10日まで中国(北京、延吉)、2018年3月12日から16日まで台湾(台北)を訪問し、図書館などで文献・資料を収集するほか、以下のような研究調査を行った。 韓国については、延世大学の朴東ジン教授、呉ビョン哲(OH, Byoung Cheol)教授、成均館大学の鄭サンヒョン(SangHyun Jung)教授、方ジェホ研究員、東国大学の延基栄教授、中央大学の張在玉教授をインタビューし、韓国における監督義務者責任の現状、とりわけ成年後見法改正後の監督義務者責任の課題と問題点について調査をした。 中国については、北京大学の常鵬オ教授、中国人民大学の丁相順教授、延辺大学の尹太順教授をインタビューし、中国の監督義務者責任の現状、とりわけ去年(2017年)に制定された民法総則における行為無能力者・制限行為能力者(責任無能力者ー未成年被監護人と成年被監護人)制度と監督義務者責任との関係について調査をした。 台湾については、台湾大学の黄詩淳副教授、陳自強教授、陳忠五教授、中央警察大学の鄧学仁教授をインタビューし、台湾の監督義務者責任の現状、とりわけ成年後見制度改正後の親族以外の監護人(後見人)の監督義務者責任の適用状況および監督義務者責任における公平責任の適用状況について調査をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究調査を通じて、中国、韓国と台湾における監督義務者責任の現状を把握し、今後の研究のための基本的な資料を入手でき、次の段階の研究課題(各国法の問題点)を明確にした。また、各国の共同研究者との協力関係を確認することができた。 中国については、2017年に制定された民法総則は、行為能力制限制度について従来の制度を維持し、親族以外の者(個人または組織)も監護人(後見人)となり、被監護人の加害行為に対して責任(侵権責任法32条、無過失責任)を負うことになっているが、実務においては、親族が責任を負うのが一般的であり、非親族監護人が責任を負うのはあまりないことが分かった。 韓国については、成年後見制度の改正により、日本と同じように親族以外の者も後見人になるが、特別法(精神保健法)により、後見人は被後見人の第三者に対する加害行為についての防止監督義務があり、被後見人の加害行為に対する損害賠償責任を負うことになっているため、その後見人の責任の当否が問題となっていることが分かった。 台湾については、成年後見制度の改正により、日韓と同じく親族以外の者も後見人になり、被後見人の加害行為に対する損害賠償責任を負うことになっているが、実際には、親族が後見人になるのが一般的であり、被後見人の加害行為に対してその後見人である親族が損害賠償責任を負うことは、社会的に認められているため、後見人の損害賠償責任はあまり問題となっていないことが分かった。そして、監督義務者責任における衡平責任の規定(187条3項)は、ほとんど適用例がないようであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進については、基本的には、本課題応募時の研究計画に沿って進めるが、今年度の研究の進捗状況(各国の基本的状況が確認でき、主な課題・問題点が明確になったこと)から、最終年度に予定していた外国から研究者を招いてのシンポジウムを前倒して、来年度(2019年3月下旬)に開催する予定である。 シンポジウムの事前打ち合わせを兼ねて、2018年夏休み(8月下旬~9月中旬)に中国、韓国と台湾に赴いて研究調査を行う。 その現地調査とシンポジウムでの各国の研究者の報告内容を精査し、残された問題点・課題を明らかにしたうえで、最終年度の研究計画を定め、本研究課題の完成を目指す。
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