2018 Fiscal Year Research-status Report
譲渡制限株式の売買価格の決定の在り方に関する法的研究
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17K03474
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保田 安彦 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (30298096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯原 心一 成蹊大学, 法学部, 准教授 (00755738)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 譲渡制限株式の売買価格 / 株式価値評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成30年度)は、米国における州会社法上の株式価値評価に関する裁判例および学説の議論状況を分析する作業を行った上で、わが国における譲渡制限株式の売買価格の決定に係る規範的価値評価のあり方について検討を加えた。より具体的に、伝統的に重視されてきたのは、株主間の公正な利害調整という観点であったが、本研究では、それを敷衍し、事前の観点を重視した上で、株主間の利害対立を調整するという観点からの検討を行った。本研究が特に重視したのは、株主のインセンティブの歪みを生じさせないという観点である。事後に裁判所が決定する売買価格(株式評価方法)は、当事者の事前のインセンティブに影響を与える。通常、譲渡等承認請求を行うのは少数株主であり、会社が当該譲渡を承認しない場合は、当該少数株主の保有株式については、支配株主(もしくはその関係者)を指定買取人にして、その指定買取人による買取りが行われるか、または、会社による買取りが行われることになるであろう。その場合、仮に裁判所が決定する売買価格が低すぎると、支配株主は低い価格で株式を取得できるようになるため、少数株主を抑圧して、少数株主が譲渡等承認請求をして保有株式を売却するよう仕向けるという行動をとる危険が小さくない。逆に、裁判所が決定する売買価格が高すぎると、少数株主は不必要に譲渡等承認請求をして保有株式の買取りを求めてくる危険がある。そのため、裁判所が通常の株式取引の場合と同じように譲渡制限株式の売買価格を決定すること(取引価格をもって売買価格とすること)で、こうした株主のインセンティブの歪みが生じないかどうかが問題とされるべきであろう。このような観点から、望ましい株式価値評価のあり方について具体的に検討を加えた上で、その研究成果の一部を論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(平成29年度)の研究の遅れも取り戻し、当初の研究計画どおりに研究を進めることができているうえに、研究成果を論文として公表することもできたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も本年度の研究を継続するとともに,さらに、「株式価値評価が問題となる場面ごとに株式価値評価の在り方が変わるとみるべきかどうか」という問題の検討も行う。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた書籍の刊行が遅れたことにより、若干の未使用額が生じた。来年度に、未使用額は、物品費(書籍代)として全額利用する予定である。
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