2017 Fiscal Year Research-status Report
民法典の編纂方針:立法技術、編成方式および再法典化をめぐる諸問題
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17K03475
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
水津 太郎 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (00433730)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 法典 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は、次のとおりである。 第1に、立法技術、編成方式および再法典化に関する文献の調査・収集をおこなうとともに、とりわけ、立法技術および編成方式の問題について、検討をおこなった。 第2に、立法技術および編成方式の問題について、民法(債権法)改正に関する議論を対象として、論文のかたちで成果を公表した。同論文では、国民にわかりやすい民法典、というコンセプトの意義や限界を明らかにしつつ、そこでの検討を踏まえて、民法典の体系のあり方、具体的には、総則をめぐる問題について考察をおこない、次の結論を得た。まず、明治民法典においてとられた民法典のスタイルは、民法(債権法)改正に関する議論において提示された、国民にわかりやすい民法典よりも、基本的に優れたものであると考えられる。ただし、基本原則と基本概念については、原則としてそれらの規定を設ける方向に、方針を改めるべきである。次に、民法典の体系については、総則方式を準用方式に改めるのではなく、総則方式を維持し、これを発展させていくほうが望ましい。もっとも、債権総則と契約総則との関係については、将来の法律家の育成という観点から、両者の一体化を図るべきである。 第3に、本研究課題と間接的に関連する問題について、雑誌上あるいは書籍として成果を公表した。たとえば、民法学における体系思考の意義を考察するものや、物権法の重要判例を初学者に対して解説するものが、この成果にあたる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、今年度は、本研究課題に関連するテーマについて、いくつかの成果を公表することができた。 他方で、本年度の研究計画では、ゲストスピーカーを招聘することを予定していたものの、諸般の事情により、実現することができなかった。また、再法典化をめぐる議論については、かならずしも十分な検討をおこなうことができなかった。もっとも、どちらの問題も、次年度以降の年度において補完することが可能なものであり、本研究課題の目的を達成するうえで、その影響は大きくない。 したがって、本研究課題は、おおむね研究計画どおりに進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、とりわけ、再法典化をめぐる議論について検討をくわえるとともに、本研究課題の観点から、物権法改正の動向について調査をおこなう予定である。 当初の研究計画では、次年度は、立法技術について集中的に考察をくわえる予定であった。しかし、立法技術については、本年度中に予定以上に研究が進展したため、上記のように研究計画を組み直すこととする。
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Causes of Carryover |
海外出張について、費用を抑えることができたために、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、研究課題に関連する書籍の購入に充てる予定である。
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