2017 Fiscal Year Research-status Report
Civil Liability for Unknown Risks: Decision under Risk/Uncertainty and Civil Liability
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17K03476
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
永下 泰之 東京経済大学, 現代法学部, 准教授 (20543515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 製造物責任法 / 過失責任主義 / 意思決定 / リスク / 不確実性 / 法の経済分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、行為者にとって認識可能性のない「未知のリスク」がその意思決定にどのように影響し、その結果として生じた「損害」に対して当該行為者の法的責任(の配分)はどのようにあるべきかを(再)検討し、もって今日における過失責任主義のあり方を模索するものである。 本年度は、「未知のリスク」および「予見可能性」をキーワードとして考察を進めた。被害者のいわゆる「素因(人の心身の脆弱性)」が加害行為と競合した場合についてである。被害者の有する「素因」は、それ自体としては加害者からは認識することができない(あるいは困難)ため、「未知のリスク」と(も)評価しうるものである。そのため、加害者側の予見可能性が重要な問題として浮上する。この問題につき、過労事案における「被用者」とはどのようなもの(と措定すべき)かの検討を行った。他方、素因が競合した場合における責任配分のあり方についても、仮定的因果関係の観点からの考察を行った。 更に本年度は、製造物責任法における「開発危険の抗弁のあり方・存在意義」についての研究を進めた。当該研究においては、いわゆる開発危険が「未知のリスク」と評価し得るのかから出発し、その定義の再検討を行った。その際には、製造物責任法立法当時の議論状況を検討した。また、立法当時の議論状況においては、製造物責任法において開発危険の抗弁を明文化することにつき、激しい議論があったところであるが、今回検討したところによれば、いずれの見解も同規定を明文化する/しないとすることにつき、決定的な根拠を示していないのではないかとの疑義が生じた。この点については、法の経済分析の観点からの分析を必要とするものであり、次年度において継続して研究をすすめる。 上記素因競合の問題については、論考としてすでに公表している。また、開発危険については、研究会にて報告済みであり、今後論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究は、交付申請書記載の研究計画に従い、順調に遂行されている。ドイツ法については、現地にて必要な文献を収集することができた。また、同年度の研究およびドイツで収集・分析した結果については、法の経済分析ワークショップにて報告を行った。同成果については、別途論考として公表することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、平成29年度に行った研究会報告(法の経済分析ワークショップでの報告)を、一遍の論文として執筆し・公表する予定である。なお、平成29年度における日本法の分析およびドイツ法の状況に鑑みると、「法の経済分析」の知見を参照する必要性があることが判明した。したがって、平成30年度には、法の経済分析に関する調査研究を進め、その結果を上記論文へと織り込む予定である。 また、平成30年度における研究結果もまた、順次研究会等にて報告し、意見交換していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度(2018年4月以降)に発刊予定である図書が複数あったが、次年度の当初計画ではその購入費を想定していなかったため、その購入費として次年度使用とした。
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