2017 Fiscal Year Research-status Report
契約法・消費者法における「不均衡」概念の理論的・立法論的可能性
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17K03478
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 彩 法政大学, 法学部, 教授 (30510995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民法 / 消費者法 / 定型約款 / 附合契約 / フランス民法改正 / フランス消費法典 / 脆弱性の濫用 / 著しい不均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、フランス消費法典の「著しい不均衡」がそのまま規制基準として「輸入」されたフランスの2016年の契約法改正オルドナンスに基づいて設けられた新1171条をめぐる議論を分析するとともに、同条の適用範囲を画する概念である「附合契約」概念について分析した。その際、前提とされている契約当事者間の債務・権利の「不均衡」は消費者契約と事業者間契約とで同一なのかについて着目するとともに、当事者間の「不均衡」が生じる典型例として附合契約が念頭に置かれていることの意味についても分析した。 以上の分析と並行して、日本の民法改正法において規制対象が約款の中でも「定型約款」に絞ったことは、当事者間の不均衡が生じやすい典型例として妥当な方向性だったと言えるのか、さらには、今後、定型約款における不当な内容の条項を排除するにあたり、消費者契約法と同一の文言を規制基準として設けている日本の定型約款規定はどのように解釈されるべきなのかを分析した。日本法の分析は論文で公表するとともに、フランス・オルレアン大学でフランス語による報告を行い、フランス民法研究者と議論を行った。フランス民法典1171条をめぐる前述した分析は平成30年度に執筆・公表予定である。 また、当事者間の不均衡は消費者契約のみならず事業者間契約においてどのような形で現れるかについて両者の契約を比較する論文を公表した。 さらに、一方当事者が「特に脆弱な消費者(高齢者、若年者等)」であって相手方がその脆弱性を利用して不当な内容の契約を締結した場合にどのような規制の在り方が考えられるかについても、フランス・ポワチエ大学にて開催された学会で報告した。また、特に成年年齢引下げ後、若年者が締結した契約によって当事者間の債務・権利に著しい不均衡が生じた場合にどのような均衡回復の在り方が考えられるかについて、論文を執筆・脱稿した(2018年度に公表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に2017年9月以降、パリ第2大学民法研究所において在外研究に従事する機会に恵まれたため、日仏の約款・附合契約論や「特に脆弱な消費者」に関する分析に専念することができた。また、フランスで日本法の状況を報告した上で、現地の研究者との意見交換を行うことができ、さらに客観的に日本の定型約款・約款論について分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、引き続き日本の定型約款論および「特に脆弱な消費者」をめぐる議論をフランスの複数の大学(ニース大学、セルジー・ポントワーズ大学、トゥールーズ大学、リヨン第3大学など)で報告した上で、現地の研究者と意見交換を行う。この作業と並行して、まず、フランスの附合契約論についての論文を執筆する。また、これまで研究代表者が継続的に行ってきた日仏の不当条項規制論比較についても、これまでの研究では不十分であった複数の論点から分析を行う。また、今年度からは徐々にいわゆる付随条項のみならず、中心条項(対価・目的物を定める条項)によって生じる当事者間の不均衡や、一方当事者のみに中心条項・付随条項の変更・決定権限を与えることによって生じる当事者間の不均衡への対処についても資料収集・分析を行う。
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Causes of Carryover |
現在、フランスにて在外研究中であるため、フランスでの調査のための渡航費用を2017年度ではなく2018年度に支出することとした。
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Research Products
(8 results)