2018 Fiscal Year Research-status Report
契約法・消費者法における「不均衡」概念の理論的・立法論的可能性
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17K03478
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大澤 彩 法政大学, 法学部, 教授 (30510995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 附合契約 / 脆弱性 / 民法 / 消費者法 / フランス法 / フランス消費法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は主として次の3つのテーマに関する成果を論文の形で公表するとともに、フランス国内の複数の大学で研究報告を行った。 第1に、当事者間の権利・義務に著しい不均衡が生じやすい類型である「約款による契約」に着目した。具体的には、日本の新民法の定型約款規定が契約当事者間のどのような関係およびどのような契約形成プロセスを念頭に置いたものであり、そのゆえにどのような特殊性があるかについては、コンメンタールで執筆し、それと同時にフランスの複数の大学(ニース・ソフィア・アンティポリス大学、トゥールーズ第1大学、リヨン第3大学、エヴリィ・バル・デソンヌ大学、リール第2大学)でそれぞれ異なる観点からフランス語で研究報告を行った。これらに大幅に加筆修正したものは2019年度にフランスの学術雑誌で公表予定である。また、フランスの附合契約規定の分析については法学志林で成果を公表した。 第2に、当事者の年齢等によって生じる契約当事者の脆弱性について、民法・消費者法でどのように考慮することがあり得るかについて、2018年消費者契約法改正の分析およびフランスの従属性の濫用規定を中心に分析を行った。具体的には、契約当事者の年齢と脆弱性の関係について日仏比較論文を執筆・公表した。また、消費者契約法改正については、フランスのセルジー・ポントワーズ大学でフランス語による報告を行った。後者はフランスの学術雑誌で公表予定である。 第3に、日仏消費法研究も引き続き行った。そのうち、いわゆるIoTと消費者法の関係については、アンジェ大学で日本法の紹介を行った。また、フランス消費法全体の特徴については日本語論文で成果をまとめた(2019年度中に公表予定)。不当条項規制における行政機関の役割についてフランス法をもとに分析し、青山学院大学消費者法研究会で報告を行った(成果は2019年度中に公表予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年9月までパリ第2大学民法研究所で招聘研究員として研究に専念できたことから、フランス法の分析はもちろん、日本法の分析についても現地で報告し、フランス人研究者と議論を行うことで考察を深めることができた。帰国後も少しずつではあるが様々な観点から成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は特に契約当事者の「脆弱性」について、民法・消費者法のみならず同じく契約当事者間の交渉力格差が見られる賃貸借契約、労働契約にも視野を広げて、交渉力格差によって生じる契約上の不均衡の例である賃貸借契約における金銭の支払いを定める特約、および、労働契約における約款規制を中心に日仏比較を行う。その成果は2019年秋の日本労働法学会、日本消費者法学会での報告によって発表する。また、フランスにおける従属性の濫用規定や「脆弱性」についても引き続き分析を行い、日本法分析のための示唆を得る。そのために、9月にフランスで情報収集をするとともに、可能であれば現地で研究者と意見交換をしたり、現地で日本法の分析結果の報告を行う。また、2019年10月に予定されている契約法改正に関する日仏比較研究会(東京で開催)で日本法についての成果報告を行う。さらに、フランスにおける従属性の濫用規定については法学志林上で論文を公表する。 消費者法研究については、日本の消費者法についてのテキストを完成させるとともに、フランス消費法の現在についても複数の論文に分けて公表する。
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Causes of Carryover |
2018年度は在外研究でパリに住んでおり、フランス行きの海外出張費を支出する必要がそれほど多くなかったことによる。また、在外研究中には日本語文献を購入していないことから、図書費の支出も少なかったことによる。
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Research Products
(8 results)