2021 Fiscal Year Annual Research Report
Disgorgement as a means of apportion of Profits
Project/Area Number |
17K03482
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三枝 健治 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80287929)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 利得の吐き出し |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もコロナ渦のため、昨年度見送らざるを得なかった海外研究者との意見交換を実施することができなかった。そこで、主に文献購読を通じて、近時の我が国の動向を新たに調査するとともに、その調査も踏まえつつ、昨年度までの考察をいっそう深化させるよう心がけた。 前者については、特に特許法の損害賠償の規定改正に着目し、これにより損害賠償の増額が可能となる一方、特許権侵害により得た利得の全ての吐き出しまでは実現しようとされたわけではなく、利得の吐き出しに対する積極・消極の二つの異なる方向が適度に調和して均衡が図られていることを確認した。 後者については、英米法において、①例えば、契約違反のケース等にまで「適用領域」を拡充させること、②故意・重過失等の行為の悪性を求めず「要件」を緩和すること、また、③事実的因果関係がないとの主張を否定して「効果」を容易に認めることにより、利得の吐き出しを推進する動きがあるが、他方で、③費用の償還、自らの技能に対する手当て、さらに利得の分配を通じて「効果」として認められる内容を縮減することにより、利得の吐き出しを制限する動きもあることを確認した。このように、利得の吐き出しに対して英米法でも積極・消極の二つの異なる方向が適度に調和して共存しているとすれば、この二つの異なる方向の調和を何を根拠にどのように図るべきか、また、その調和のとり方が適用領域に応じて異なりうるかを理論的に分析することが本研究の最大の課題である。目下、この課題に取り組んだ成果を速やかに学術論文にまとめ、公表することを予定している。
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