2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03484
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大塚 英明 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (70168996)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 傷害保険契約 / 保険事故 / 偶然性 / 外来性 / 偶然の手段 / 偶然の結果 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国における傷害保険契約の構造的問題として最も重要なのは、その保険事故の画定である。傷害保険の保険事故には、急激性、外来性そして偶然性が備わらなければならないとされ、これらのいずれかが欠如する事象はそもそも傷害保険契約の対象から外れるものと理解されてきた。わが国では、これらの諸要件は一律に「要件性」を備えるものと理解され、個別に適用・吟味されることが圧倒的に多かった。そして個別の要件考察が行き詰まった場合、悪く言えば一つの「逃げ」の論法が広く普及するにいたってしまった。それは例えば、偶然性の「立証責任分配論」であったり、「外来性の判断基準論」であったり、それぞれの「要件」の個別問題として論じられてきたのである。 しかし、端的にいえば、傷害保険の保険事故において要件たる骨格を持つのはあくまで「偶然性」であり、「急激」や「外来」は、その偶然性の有無の判断のために補助的作用を果たすにすぎない。そこでまず研究を開始してから約一年を使って、「外来」と「偶然」との相関関係、すなわち、外来という基準は偶然性を判断する際にどのように影響すべき要素なのかを探った。 素材としてはアメリカ判例法理を用い、傷害保険理論の普遍的な性格に照らし、その結論を日本法にも応用できるという前提で考察を進めた。その結果を、後掲の論文にまとめるに至った。それを要約すれば、外来という要素をあまりに形式的に理解することは危険であり、あくまで作用性・起動性という観点から偶然性をサポートすべき存在にすぎないものとして捉えなければならず、過度な特定事象への執着(とくに外来かどうかという視点から)は危険であるいう結論である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ判例理論の検討・論文化の最後の成果であり、初年度に「まずアメリカの資料分析・検証の作業を先行させたい」とした研究計画・方法の主眼を果たせたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで成果にしてきたアメリカの判例法理を総括すると、かなり重要な理論的展開を導くことができたと考える。そこで、申請時には2年次目にイギリスの傷害保険法理を分析検討する予定であったが、これをいったん置き、わが国の傷害保険理論にアメリカ法理から引き出し得た成果を当てはめることによって、独自の傷害保険契約法理をわが国の「解釈論」として公表することを優先すしたい。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたアメリカの現地調査の実施ができなかったため。本年度にアメリカ判例法理を最終的にとりまとめる前に、今年度に同現地調査を実施する予定。
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Research Products
(1 results)