2017 Fiscal Year Research-status Report
子の奪い合い予防に着目した父母の離婚前取り決めを促進・支援するイギリス制度の研究
Project/Area Number |
17K03487
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 千恵 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (60440575)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス / 合意形成支援 / 紛争予防 / 子の奪い合い |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、別居または離婚後の子の監護に関する取り決めが父母らの行為規範として機能する点に着目し、子をめぐる紛争予防の見地から効果的な取り決め促進システムの構築について検討するため、取り決め率の高いイギリスの法状況から手がかりを得ようとするものである。取り決め率を高めている背景には、父母らの取り決めを直接的、間接的に支援する多様な合意形成支援者の存在とその利用を容易化し動機づける何らかの「しくみ」が定着していることが考えられる。そこには、日本と異なる社会・文化および歴史的経緯、宗教観、家族観等の影響もあろうが、日本においても、こうした「しくみ」の解明は重要な示唆となる。2017年度は、以下の2つの調査を行った。 前半は、まず、最近の改正法を中心としたイギリス法の動向に関する文献調査、国内外の学会参加による情報収集を行った。これらにより、第三者の合意形成支援の利用を推進・強化する方向でイギリス法が進展しつつあることが明らかとなった。その結果を子の奪い合い発生後の司法救済の限界性という観点から考察し、論文として発表した。現段階では素描にとどまるが、日本法への示唆を得ることもできた。 後半は、イギリスの法制度を支える合意形成支援者の実態を把握するため、渡英し文献および聞き取り調査を実施した。研究計画書においては、①「取り決め(父母らの行為規範の定立)」段階の第三者支援、②取り決め後の「取り決め遵守」段階の第三者支援を分けて、順に調査する予定であったが、①段階の支援と②段階の支援は密接に関連することから、いずれも併せて本年度からの調査対象とした。具体的には、CAFCASS(家庭裁判所助言支援サービスの略称)、NACCC(面会交流センター全国協会の略称)での聞き取り調査を実施した。その結果については分析・検討し、現在、次年度の学会等発表のため準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、研究実績の概要に示したとおり、文献等を収集することにより、子の奪い合い後の司法救済の限界性と近年のイギリス法の動向との関係性を明らかにすることができた。その成果については論文で発表することもできた。また、イギリスにおける実態調査後のフィードバックおよび収集したその他資料、学会情報などを整理し、次年度の学会等発表準備段階に至っている。以上のことからおおむね初年度の目標に達していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、引き続き、イギリスでの第三者による合意形成支援を中心とした調査研究を行う。 まず、2017年度に得られた成果に関しては、学会等で中間報告を行う。次に、2017年度の調査で十分に把握できなかった部分については、再度、文献調査等を行うとともに渡英し聞き取り調査を実施する予定である。特に、①父母間の意見対立が表面化していない段階からの合意形成支援と父母らの利用実態、②イギリスにおける合意形成支援者の育成・適格性の確保の方策とチャリティとの関連性、に重点を置きつつ調査研究を進める予定である。具体的には、事務弁護士(solicitor)や民間の調停員(mediator)、新たな取り組みを行っている一部のCAFCASSを調査対象とし、合意形成支援者を法制度内外で活用しうる背景・要因を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
イギリスでの再度の聞き取り調査およびその他資料収集を主とした旅費を計上している。また、2017年度に補充できなかった書籍の購入を予定している。
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