2018 Fiscal Year Research-status Report

傷害保険の原因事故概念に関する研究

Research Project

Project/Area Number	17K03489
Research Institution	Kyoto Sangyo University
Principal Investigator	吉澤卓哉京都産業大学, 法学部, 教授 (50708360)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords	傷害保険 / 原因事故 / 偶然性 / 原因事故発生の偶然性 / 結果発生の偶然性
Outline of Annual Research Achievements	本研究の目的は、研究の第１段階としては、傷害保険約款における原因事故について、あるべき捉え方を明らかにすることである。この第１段階の研究は、学会報告、学術雑誌掲載、社会実装（保険業界紙への論文紹介記事掲載）を平成２９年度に完了している。研究の第２段階は、傷害保険における保険給付要件の一つである原因事故の偶然性には、２種類の偶然性（原因事故発生の偶然性と結果発生の偶然性）が存在することは、従前より異論のないところである。しかしながら、原因事故の偶然性に２種類のものがあることが、傷害保険の他の保険給付要件や保険者免責条項にどのような影響を与えているかについては研究がほとんどなされてこなかった。そして、他の保険給付要件や保険者免責条項の意味内容を検討する際には、なんの断りもなく、原因事故発生に偶然性のある事案を当然の前提として議論が展開されていることが多い。そこで、この第２段階の研究において、原因事故の偶然性に２種類のものがあることが傷害保険の他の保険給付要件や保険者免責条項にどのような影響を与えているかを明らかにすることにした。平成３０年度中にこの研究も終了した。すなわち、「傷害保険における２種類の偶然性―原因事故発生の偶然性と結果発生の偶然性」産大法学５２巻２号（平成３０年７月）２９-１４２頁として研究成果を公表した。また、この研究成果を社会実装するため、保険業界の業界紙である保険毎日新聞で研究概要を公表した（平成３０年１１月２１日付け保険毎日新聞）。その後、第１段階の研究成果および第２段階の研究成果を元にしつつも、再検討を行い、また、不足部分を補ったうえで書籍を刊行すべく、書籍原稿の執筆を行っている（未完）。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 1: Research has progressed more than it was originally planned. Reason 当初に予定した研究は完了したため。具体的には、研究課題について研究を進めたうえで、学会発表を行い、そして、学術誌に論文を掲載した。その論文は、「傷害保険における原因事故の捉え方について」産大法学（京都産業大学）５１巻２号（平成２９年７月）１-６２頁、および、「傷害保険における２種類の偶然性―原因事故発生の偶然性と結果発生の偶然性」産大法学５２巻２号（平成３０年７月）２９-１４２頁である。なお、研究成果を発表した論文が相当のボリュームとなるので、それらを基にして著書を作成すべく、既発表論文の再検討、および、追加研究を現在行っている。
Strategy for Future Research Activity	本研究の成果として発表した２論文、すなわち、「傷害保険における原因事故の捉え方について」産大法学（京都産業大学）５１巻２号（平成２９年７月）１-６２頁（第１論文）、および、「傷害保険における2種類の偶然性―原因事故発生の偶然性と結果発生の偶然性」産大法学５２巻２号（平成３０年７月）２９-１４２頁（第２論文）を基にして、著書を作成する準備を行う。具体的には、両既発表論文について、新しい裁判例を加え、また、記述内容の再検討を行う。さらに、両論文では検討しなかった分野（原因事故を一定の事象に限定する傷害保険、海外旅行傷害保険、自動車保険）について、第１論文のテーマに関する追加研究を行う。そのうえで、著書の体裁としていく予定である。
Causes of Carryover	１．次年度使用額が生じた理由研究が順調に進捗したため、物品費に若干の残余が生じた。２．使用計画プリンタのインクカートリッジを購入する予定である。