2021 Fiscal Year Research-status Report
会社訴訟のコーポレートガバナンスにおける役割の変容
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17K03492
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山田 泰弘 立命館大学, 法学部, 教授 (00325979)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会社の補償 / 取締役の責任 / 取締役の責任免除 / 株主による株主総会招集 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、株主総会決議関連訴訟における当事者主義に関する理解とともに、そもそも仲裁判断が示されていた下級審判例(岡山地判昭和53年12月13日判例タイムズ377号133頁)のある少数株主による株主総会招集について、その意義を確認するために、少数株主による株主総会招集許可申立事件について検討を進め、非訟事件手続法に関する検討を進めた。昭和53年岡山地判では、「仲裁判断をもつて裁判所の許可に代置し得ない」として、非訟事件による株主権行使に関して仲裁判断の利用を否定しているように思われたが、そもそも非訟事件については、裁判所の許認可を得るための手続として設定されるものと、非訟事件に関する利害関係者間の紛争の解決を志向するもの(例えば株式買取請求における価格決定申立事件)とでは性格を異にし、後者は、そもそも当事者の意思(合意)により解決が一定可能な領域であり、一般的に私人が自由意思で処分(和解)し得る性質のものとして、仲裁の対象としうる余地がある一方で、前者は、まさしく裁判所の許認可を得ることを目的とするものであるため、両者の間には差があることを意識できた。これに基づけば、昭和53年岡山地判の射程は広くないものと考えるべきことを理解できた。 この検討の過程において、少数株主権の株主総会招集許可申立てにおける要件を確認し、「株主による株主総会招集許可申立における取締役の招集遅滞の審査」立命館法学399=400号(2022年3月)1024-1051頁を発表した。 会社の補償については、2020年度の研究の成果をまとめ、「会社の補償」砂田太士ほか編『企業法の改正課題』(法律文化社、2021年7月)229-248頁として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、イギリス・ドイツ・アメリカでの実地調査を予定していた。しかし、研究の進捗にあわせて、会社訴訟における仲裁制度の利用という側面については、実際の利用ニーズの存在がアメリカにおいても見いだしにくいという指摘を受けた。他方で、ドイツ法においては、民事訴訟についてADRを前置するような制度改革を受け、会社訴訟もその例外ではなく、ドイツにおいて調査が必要と感じているが、COVID-19による渡航の難しさから、調査は進んでいない。これを受けて、比較法的な検討から、国内でも可能な周辺領域トの整合性に関する研究にシフトし,一定の深度を確保している。
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Strategy for Future Research Activity |
国内での研究を中心に進める。2021年度に実施した研究では株主権が非訟事件手続と訴訟手続とで行使される場合に差異がありうることが確認できた。これを受けて2022年度は、株主権を行使する訴訟における当事者主義の意義について検討を進める。 会社の補償制度については、引き続き、責任免除、報酬法制を合わせて、多角的に分析し、現状の分析を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度についても延長可能という連絡を受けたため、COVID-19の影響を見つつ、ドイツ、イギリスへの調査の可能があり得るため、22年度の研究計画においてその可能性を見つつ判断したいとして、使用せずにいた。2021年度の研究成果はそれまでに購入したスキャナー、PCを利用して実施した。国内での研究会については、オンラインでの開催となり、研究旅費も不要となっていた。 2022年度は、資料購入を基礎に、ドイツ・イギリスへの調査についても視野に入れつつ研究費を使用したい。
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