2018 Fiscal Year Research-status Report
知的財産訴訟における一元的統御と多元分散的統御の最適化
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17K03499
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 広志 北海道大学, 法学研究科, 教授 (70360881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特許 / 訂正 / 訂正の再抗弁 / パブリック・ドメイン / 新規性 / 先使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
パブリック・ドメインの保護を中心に検討した昨年とは変わり、本年度前半は、特許権の訂正に絡んだ2つの論考を発表した。 共に手続的な色彩が強い研究であるが、1つは、これまで注目されてこなかった特許法127条について、裁判例を解説しつつ立法的な齟齬を指摘して、当面の解釈論を展開するとともに法改正の必要性を示唆した。 もう1つは、訂正の再抗弁に関する最高裁判決の評釈である。これは裁判官や弁護士の間で非常に難しい問題として共有されている論点であるが、この点についても判例を解説しつつ、知的財産高等裁判所と最高裁判所の役割分担や、知財高裁大合議判決の役割など、一元的統御と多元分散的統御の最適化という、本課題にマッチした研究を発表することができた。また、この実務的なテーマについて、北海道大学において実務家向けに掲載しているサマーセミナーでも報告し、最新の研究を実務に還元している。 現在、この最高裁判決をフォローする形で下級審の裁判例の分析を試みている。 また、これまで本格的に検討した経験が無かった機能的クレイムとコンピュータ関連発明に関する問題についても、論考を1本発表した。また、改正された特許法167条に関する判例解説を1本投稿した(2019年度公表予定)。ここでも、先行する最高裁判決の射程とその役割という角度からの検討を加えている。 本年度後半は、再びパブリック・ドメインの保護に関する研究に戻り、新規性要件と先使用について、従来の学説を超えて再構成を試みた論文を執筆中(投稿済み)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文を5本発表することができた。また、北海道大学情報政策学研究センター主催の実務家向けセミナーにおいて、2時間半の講演を2回行った。このことから、研究は順調以上に進展していると考えている。 次年度は新規性と先使用に関する論文を投稿済みである。また、訂正の再抗弁に関する最高裁判決をフォローする論文の執筆も始まりつつあり、一元的統御と多元分散統御の最適化という本課題を進めつつも、発展的なテーマの開拓も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の後半に入るため、統御主体のありかたという現テーマと、現在興味を持っている、パブリック・ドメイン保護のありかたというテーマ(候補)との架橋方法も視野に入れつつさらに研究を発展させていく。
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Causes of Carryover |
次年度は外国出張を控えており、また、パソコンの更新時期に当たっており支出が膨らむ恐れがあるため、念のため積み残した。
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