2018 Fiscal Year Research-status Report
図書館・アーカイブに関する著作権法のあり方-図書館情報学と法学の架橋に向けて-
Project/Area Number |
17K03500
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (80375518)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 著作権法 / 知的財産法 / 図書館 / アーカイブ / 図書館情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インターネットやデジタル技術が発展した現代において、技術を活用した知識や情報の集積・共有のために、著作権制度がどのようにあるべきかという問題意識のもと、図書館情報学の知見をもとに、図書館やアーカイブの法的な位置づけや意義・機能を明らかにしたうえで、図書館に関する著作権の制限規定のあり方や、孤児著作物問題への対応策などを検討し、図書館・アーカイブに関する著作権法の解釈・立法への示唆を提示することを目的とするものである。 本研究は、5年間の研究計画を予定しており、今年度は2年目にあたる。 今年度は、2018年著作権法改正(「著作権法の一部を改正する法律」(平成30年法律第30号))等が行われ、著作権の制限規定としていわゆる「柔軟な権利制限規定」が整備されるとともに、アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等が行われた。図書館サービスの提供やアーカイブでの著作物の利用等においては、著作権の制限規定の解釈・立法のあり方が大きく関わる。そこで今年度は、著作権法改正に関する情報収集等を行い、著作権の制限規定に関する基礎的な考察を行いつつ、著作権法改正によって整備された権利制限規定の意義と課題について検討を行った。特に「柔軟な権利制限規定」は、情報通信技術の進展等の時代の変化に柔軟に対応するために整備された規定であり、今後の活用が期待されているが、対象とされているのは、通常権利者の利益を害しないと考えられる行為類型と、権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型である。それ以外の本来的な著作物利用は、図書館やアーカイブに関連する利用が多いと想定されるものの、「柔軟な権利制限規定」の対象外となっている。そのため「柔軟な権利制限規定」の適用範囲には限界があり、特に図書館やアーカイブに関連する著作権の制限規定のあり方に関しては、引き続き検討していく必要があると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は本研究課題における著作権法に関連する事項を中心に調査・検討を進めたため、図書館情報学の観点からの基礎的な調査等における初年度の遅れを解消するに至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関連する基礎的な情報の収集・整理を引き続き進めつつ、具体的な裁判例や論点等の検討を重点的に行っていく。
|
Causes of Carryover |
研究計画における図書館情報学の観点からの基礎的な調査等の進行がやや遅れているため、資料の購入や出張等の情報収集のための予算が残存し、次年度使用額が生じた。これについては、次年度以降、本研究課題を遂行するにあたって必要となる情報収集等のための物品費・旅費等に充当する。
|