2019 Fiscal Year Research-status Report
図書館・アーカイブに関する著作権法のあり方-図書館情報学と法学の架橋に向けて-
Project/Area Number |
17K03500
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村井 麻衣子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (80375518)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 著作権法 / 知的財産法 / 図書館 / アーカイブ / 図書館情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代において著作権制度がどのようにあるべきかという問題意識のもと、図書館情報学の知見を踏まえたうえで、図書館やアーカイブの法的な位置づけや意義・機能を明らかにし、図書館・アーカイブに関する著作権法の解釈・立法への示唆を提示することを目的とするものである。 本年度は、著作権法における知る権利の保障に関する41条(時事の事件の報道についての著作権の制限規定)が関連する事例等について判例研究を行い、また、船橋市西図書館蔵書廃棄事件最高裁判決(最判平成17年7月14日民集59巻6号1569頁)の検討に着手した。 図書館やアーカイブの意義・機能を検討するに当たっては、「知る権利」を実質的に保障する機関としての位置づけに着目したいと考えている。図書館の機能における知る権利の位置づけや、著作権法と知る権利の関係については、憲法上の議論を参照しつつ、今後も検討を進めていきたい。 また、船橋市西図書館蔵書廃棄事件最高裁判決は、図書館を住民に図書館資料を提供するための「公的な場」と位置づけたうえで、さらに、そこで閲覧に供された図書の著作者にとっても、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあると述べ、公立図書館の図書館職員による図書の廃棄における不公正な取り扱いが、図書の著作者の人格的利益を侵害しうる旨を認めた。この最高裁判決は、憲法上の表現の自由やパブリック・フォーラム論、著作権法における著作者人格権や著作者の人格権、図書館法等の図書館関連法規における図書館の機能・役割、民法上の名誉毀損や名誉感情侵害等、様々な領域における論点が関係しうることがわかった。各論点はそれぞれの領域において研究がなされてきた問題であり、網羅的に調査・検討を深めることは容易ではないが、各論点についての先行研究を十分精査したうえで統合的な検討を進めていく必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題に関連する研究分野が幅広く、文献調査に当初予想より時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究テーマに関連する各研究領域の先行研究について調査を進め、船橋市西図書館蔵書廃棄事件最高裁判決(最判平成17年7月14日民集59巻6号1569頁)等、具体的な事例についてより詳細な検討を行う。著作権の制限規定に関する調査研究も進める予定である。
|
Causes of Carryover |
研究計画に関連する分野が幅広く、調査に時間を要し、研究計画の進行がやや遅れているため、資料の購入や出張等の情報収集のための予算が残存し、次年度使用額が生じた。これについては、次年度以降、本研究課題を遂行するにあたって必要となる情報収集等のための物品費・旅費等に充当する。
|