2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代AI・IoT時代の情報法におけるコア原理とリバランスに関する日米欧比較研究
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17K03501
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 いつ子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00262139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公法学 / インターネット / 表現の自由 / 著作権 / プライバシー / 国家安全保障 / 人工知能 / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、本交付申請書の研究目的欄に記した3つの軸の下での成果として、主に、以下の2つが挙げられる。 第1に、著作権法の例外・権利制限規定を「ユーザーライツ」として概念化しようとする近年の議論動向を取り上げ、その意義や課題等を検討することを通じて、表現の自由と著作権といういずれも重要な諸価値間の調整においては、AIやアルゴリズムの社会応用といった情報環境の変化に伴い、従来のバランスのとり方を不断に見直していく必要があり、そうしたいわば<リバランス>の営為を担保するチェックとしての機能が、ユーザーライツ概念には含意されていること等を明らかにした(後掲の研究発表欄の「表現の自由と著作権」を参照)。 第2に、本研究の中間的な成果物として、例えば、第10回国際憲法学会世界大会では、近年のアメリカにおいて、(1)政府が監視にあたりその協力に依拠してきた、「監視の中間媒介者」と評されるネット上のサービスを提供する民間事業者が、一部の限られた場面ながらも、エンドユーザーの権利利益のための擁護者として立ち現れて、政府による秘密裡の監視に抵抗するという興味深い事象も見出せること、そして、(2)もし公的部門と民間部門を横断するこうした新たな形での権力分立ないしは「抑制と均衡」がレジリエントに機能するのであれば、ブラックボックスとされるアルゴリズムの応用が国家安全保障での監視という秘匿性の高い分野で進められることに伴う、いわば二重の秘密性には、やや逆説的ではあるものの、希求されるべき諸価値の実現を支える新たな保護措置を試行する場として仕える可能性も秘められていること、等を指摘した(後掲の研究発表欄の「Free Speech, National Security, and Privacy under Stress of Algorithmic Surveillance」等を参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前掲の「研究実績の概要」欄に記載した国際憲法学会世界大会に加えて、比較法国際アカデミーが主催する4 年に1 度の「比較法国際会議」においても、本研究の中間的な成果物である英語での論稿を発表する機会に恵まれ、また、世界中から集った法学等の関連分野の研究者・実務者から本研究の構想・計画・成果について高い評価を得ることができ、さらに、ヒアリング調査・ディスカッション・本研究に対するレビューも、次年度以降に予定していた分も含めて効率的に実施することができたことから、本研究は、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、前掲の「研究実績の概要」欄および「現在までの進捗状況」欄に記載したように、当初の計画以上に進展しており、研究遂行上の支障等は生じていないため、今後も交付申請書に記載した研究実施計画に基づいて遂行することとしたい。
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Causes of Carryover |
本年度に国際会議・国際学会での発表等を行うための海外旅費について、当初、開催地や渡航期間の関係で費用が高額となることを想定して予算を確保していたところ、開催地が近隣となり旅程も短期間となったため、海外旅費に差額が生じた。次年度以降も海外での国際会議等への参加を予定しており、また、海外旅費は開催地や季節による費用の変動の幅が大きいため、次年度使用額は引き続き旅費として使用する予定である。
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