2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船越 資晶 京都大学, 法学研究科, 教授 (70362548)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 批判法学 / ジェンダー法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の研究を実施した。 第一に、昨年度に引き続き、ジェンダー法学理論の変容に向けた基礎的作業として、フランシス・オルセンの法的思考批判に提示されている枠組を活用して、フェミニズム/ジェンダー法学の諸理論のサーベイおよびマッピングを進めた。 第二に、ジェンダー法学実践の変容に向けた基礎的作業として、本研究が現代的な法的思考スタイルのもう一方の構成要素として念頭においている分配分析の理路を確認するとともに、オルセンの権利論批判を手がかりとして、これをジェンダー関連領域において具体化する作業を進めた。 第三に、裁判理論研究に進出、本研究の提唱するジェンダー法学的な法的思考が稼働し得る場となるよう、裁判過程のあり方をめぐる解釈を組み替えることを試み、その成果を論文「裁判理論の熟議/闘技民主主義―新制度論研究ノート」として公表した。その概要は以下のとおり。近時、アメリカにおける司法政治論のアプローチとして有力化しつつある新制度論は、裁判の政治化に関する多数の経験的研究を蓄積してきているが、これらの研究から導かれる裁判過程の解釈は二つの方向に分岐している。すなわち、政治化した裁判過程に法の確定性と政策的合意の達成を見出す多元主義=熟議民主主義的解釈と、そこに法の不確定性と政策的対立の永続を見出す超多元主義的解釈である。このうち後者は、批判法学とりわけダンカン・ケネディの闘技民主主義的裁判過程モデル(陣地戦モデル)と接続することが可能であり、それによって裁判過程は、アイデンティティ=権利の承認と富の分配をめぐる政策論争の場として立ち現れることになる。以上の研究成果は、ジェンダー法学の実用化のためのより広範な理論的基盤を提供するとともに、ジェンダー法学の成果を裁判理論の発展に結びつける意義を有するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、ジェンダー法学理論の変容とジェンダー法学実践の変容を通じたジェンダー法学の実用化に向けて、本年度は以下の成果を挙げることができた。 第一に、昨年度に引き続きフェミニズム/ジェンダー法学の諸理論のサーベイおよびマッピングを進めることにより、本研究の一般性をより高めることができた。 第二に、ジェンダー関連領域における分配分析の実際について考察を進めることにより、本研究の具体性を高めることができた。 第三に、裁判過程の闘技民主主義的解釈を提示し、そこで本研究の提唱するジェンダー法学的な法的思考が稼働し得ることを証示することにより、本研究全体をより広範な理論的基盤の上に据えるとともに、その射程を拡張することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、ジェンダー法学理論の変容とジェンダー法学実践の変容を通じたジェンダー法学の実用化に向けて、本年度は、基礎的作業を継続するとともに研究全体の理論的基盤を拡張する研究成果を公表することができたので、次年度以降は、本研究の提唱するジェンダー法学的な法的思考の具体的内容について、順次研究成果を公表することを目指したい。
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Causes of Carryover |
所属研究機関より資金の配分を受け、その使用を優先せざるを得なかったため、次年度使用額が発生した。当該助成金については、研究対象の拡大(「研究実績の概要」参照)に伴い新たに必要となった物品(裁判理論に関する書籍等)の購入に充てたいと考えている。翌年度分の助成金については、当初の計画どおりに使用していきたい。
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Research Products
(1 results)