2017 Fiscal Year Research-status Report
日独におけるメディア法およびカルテル法上のクロスメディア所有規制の現状と法的枠組
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17K03507
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
杉原 周治 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50456191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツにおけるクロスメディア規制 / Axel Springerの合併計画事件 / ドイツ連邦行政裁判所2014年1月29日判決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「日独におけるメディア法およびカルテル法上のクロスメディア所有規制の現状と法的枠組」を明らかにすることを目的とするが、平成29年度は、とりわけ、ドイツにおけるメディア法上のクロスメディア所有規制の分析を、判例・学説の議論の検討を中心に行った。その成果の一部は、工藤達朗・西原博史・鈴木秀美他編『戸波江二先生古希記念 憲法学の創造的発展(上巻)』(信山社・2017)に掲載された論文、杉原周治「民間放送における『支配的な意見の力』と集中排除規制」623-649頁において、既に公表された。 本論文は、ドイツ最大のメディア企業であるAxel Springer社によって企てられた、ドイツ民間放送最大手の一つであるProSiebenSat.1社の合併計画事件をめぐる一連の裁判のうち、2014年1月29日に下された連邦行政裁判所判決の分析を行ったものである。両社の合併が実現すれば、Axel Springer社は複合的メディア・グループとなるはずであったが、当該合併は当初、州の監督機関により2006年に拒否された。その理由は、当該合併によって、ドイツのクロスメディア規制にいう「支配的な意見の力」が生じたと判断されたからであった。 これに対して、本件の連邦行政裁判所の2014年判決は、結論としては、Axel Springer社は本件合併によっても「支配的な意見の力」を獲得することはなかったと結論づけ、上述の州の監督機関の2006年決定を不適法としたのであった。 本研究により、ドイツにおけるメディア法上の集中排除規制における現状と法的枠組みの詳細が、日本において初めて明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果は、初年度であるH29年度において、すでに、論文・杉原周治「民間放送における『支配的な意見の力』と集中排除規制」工藤達朗・西原博史・鈴木秀美他編『戸波江二先生古希記念 憲法学の創造的発展(上巻)』623-649頁(信山社・2017)として公表することができ、ここまでは順調に進展していると言うことができる。 ただし、それ以後に取り組んでいる第二の論点である、ドイツにおける「カルテル法上のクロスメディア所有規制の現状と法的枠組」については、上記の成果公表後から現在まで、研究の進歩状況に若干の遅れが生じていることも確かである。 なぜなら、本論点については、ドイツにおいて、メディア法とはまったく別の観点から議論が進められているだけでなく、裁判においても、カルテル法の観点から独自の判決が既に数多く下されており、判例・学説の議論を新たに分析する必要が出て来たからである。また、このカルテル法上の観点から分析された文献の量が当初の想像を超えており、資料収集にも時間を取られている状況がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のうち、平成30年度は、さしあたりドイツにおける「カルテル法上のクロスメディア所有規制の現状と法的枠組」の分析を進めていきたいと考えている。その際、法制度の分析だけでなく、同時に学説および判例の分析を行っていくことにしたい。 また、この論点の検討に加えて、メディア法およびカルテル法上のクロスメディア規制の比較検討、ならびに日独の法制度の比較検討まで進めていくことが、将来の課題となる。 さらに、これまでは、クロスメディア規制の分析を民間放送の領域に限定して行ってきたが、最近ドイツでは、公共放送の領域における「意見多様性」の問題も新たに議論がなされてきており、この論点についても並行して研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
残額分の7,052円は、物品費の購入にあてる。
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