2019 Fiscal Year Annual Research Report
Protection and utilization of medical records -To build a national health record database
Project/Area Number |
17K03508
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
増成 直美 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80538843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 診療情報 / 二次利用 / プライバシー / オプトアウト / 公益 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の医療費高騰を抑制し、より安全な医療を患者に提供するために、患者の診療情報の電子化およびデータベース化を推進する動きは、わが国を含めて世界的なものとなっている。処方箋情報を含む診療情報の電子化・データベース化により、医療事務の軽減を図り、疫学研究において診療情報を有効活用して薬の有害作用等を早期に把握しようとするものである。さらに、国家レベルという、より大きなサンプルサイズの利点は、より強力な統計上の検出力と決定力を提示しうるのであり、これにより稀な疾患や治療による稀な有害事象を把握することも可能になる。 このように、診療情報の電子化・データベース化には、医療の安全、効率化、疫学研究への利用等の多くの利点がある。しかし他方で、患者のプライバシーが問題となる。欧米においても、医療情報の利活用と患者のプライバシー保護の調整については議論が尽きない状況ではあるが、近時、幾多の批判にもかかわらず、医療分野における個人情報の利用を一層推し進める方向性が打ち出されている。 ところが、これまで診療記録データベースの構築および利活用において世界をリードしてきた国々において、プロジェクトの再試行や廃止が表明されるに至っている。いくつかの成功例との比較検討によれば、データ主体となる住民など利害関係者との効果的で十分なコミュニケーションの欠如があり、単に法律を整備するだけでは不十分であり、真の課題として透明な責任ある慣行による法の実施が求められる。すなわち、法律の整備だけでは、国民や利害関係者らの支持を得るには不十分であることが明らかになっている。 他方わが国では、レセプトデータベース等を医学・医療研究目的のために利活用することで、健康長寿社会の形成をすることを目指す「次世代医療基盤法(平成29年法律第28号)が、改正個人情報保護法の特例を定めるものとして制定された。今後の展開が興味深い。
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