2018 Fiscal Year Research-status Report
消費者取引に関する集団的被害救済と違法収益徴収における司法と行政の役割
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17K03510
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
宗田 貴行 獨協大学, 法学部, 准教授 (60368595)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 集団的消費者被害 / 集団的利益 / 行政処分による被害救済 / 団体訴訟 / 消費者団体 / 消費者団体訴訟 / ムスタ確認訴訟 / 消費者裁判手続特例法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的(消費者の集団的被害の回復)に関し、第一に、「適格消費者団体の差止請求権の種類・目的・要件・内容――妨害排除請求権の意義とその活用――」を公表し、適格消費者団体訴訟の差止請求権の種類・要件・内容について、従来の学説・判例の問題点・限界と、例えば、不当表示の事例での訂正書面配布請求が、消費者団体の妨害排除請求権に基づき可能であることと、妨害排除請求権に基づく返金請求も、不当約款の事例で可能であることを指摘した。第二に、ドイツ競争制限禁止法第9次改正に関する論文も公表し、消費者被害救済の場面での証拠収集方法の改善等について、我が国にとって有用な示唆を得た。第三に、消費者の集団的利益保護のための団体訴訟に関するEU指令案に関する論文を公表し、妨害排除請求権に基づく被害救済及び共通責任訴訟手続の提案から、我が国の消費者裁判手続特例法の手続の問題点を考察した。第四に、「ドイツ民訴法改正による多数消費者被害救済のためのムスタ確認訴訟制度の制定 ――我が国の消費者裁判手続特例法との比較検討――」を公表し、ドイツの新しいムスタ確認訴訟制度の制定過程を検討することによって、我が国の消費者裁判手続特例法上の手続の問題点を検討した。 本研究の上記第二の目的(行政処分による消費者被害の回復)について、第一に、日本消費者法学会にてシンポジウム報告を行い(青山学院大学2018年11月11日)、予稿「行政処分による消費者被害救済」を公表し、景表法・特商法上の行政処分による集団的消費者被害救済の可否について検討した。第二に、「ドイツ競争制限禁止法上の行政処分による集団的消費者被害救済」を公表し、ドイツにおける行政処分による被害救済について検討を行った。第三に、行政処分による集団的消費者被害救済について、現時点での筆者の研究の集大成的な論文を獨協法学に2019年中に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
筆者の予想以上に研究の成果に対する反響と研究に関する議論の展開があったからである。具体的には、以下のようないくつかの要因が重なっているといえる。 第一に、日本の学会(日本消費者法学会)からの報告(2018年11月11日、青山学院大学)の依頼である。第二に、内閣府・消費者委員会の消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキンググループからの報告依頼である(2018年11月20日)。第三に、2018年4月から1年間ドイツ・ハンブルグにて海外研修をマックス・プランク研究所客員研究員として行えたことである。第四に、ドイツ滞在中に、当初予定していた訪問先以外にも、ヒアリングの機会や学会・研究会・講演会への参加を得ることができたことである。第五に、2018年4月11日、欧州委員会の消費者の集団的利益の保護のための代表訴訟に関する指令案が公表されたことである。これは、本研究の第一の目的に関するものであり、筆者の博士論文のテーマとも密接に関係するものであるので、さっそく翻訳し、我が国との比較をした論文を公表することができた。第六に、2018年5月には、ドイツにおいて消費者の集団的被害救済のための新たなムスタ確認訴訟制度が制定され、同年11月1日より施行されたことである。これも、本研究の第一の目的と関係するため、早速翻訳し、消費者裁判手続特例法との比較を行う論文を公表することができた。第七に、日本の雑誌(国民生活研究)からの論文執筆を依頼されたため、上記ムスタ確認訴訟制度の運用面についての論文を公表することとなった。第八に、上記の筆者の研究について、マックス・プランク研究所の紀要Japan Recht誌に欧文での論文の執筆を依頼されたことである。第九に、日本経済法学会から学会報告(2019年10月)の依頼を受けたことである。 以上の諸点により、本研究は、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、消費者被害救済を民事法及び司法によって行うことに関し検討すべき問題点及びその限界と改善策、集団的消費者被害の救済に行政機関が介入することの妥当性、根拠、範囲等について明らかにすること及び、集団的消費者被害救済及び違法収益徴収制度における司法と行政の役割を明らかにすることを目的として行われるものであるため、今後、以下のことを研究する。 第一の目的に関しては、適格消費者団体訴訟の差止請求権の種類・目的・要件・内容に係る上記論文、EU新指令案に関する論文、ドイツ・ムスタ確認訴訟に関する論文からの継続的研究として、EU及びドイツにおける議論の展開を踏まえた書籍(単著)『消費者団体訴訟と被害救済(仮)』を2019年度中に信山社から出版することが決定している。そこでは、適格消費者団体は、単に将来の行為を差し止ることを求める請求権を有するだけではなく、違反により生じなお現存する妨害状態の排除を行うための作為を請求する妨害排除請求権に基づいて、不当表示の事例での当該表示物の撤去、訂正書面の配布、さらに、一定の場合には、返金請求も可能であることを指摘する。また、ムスタ確認訴訟制度との比較を通じて、消費者裁判手続特例法上の手続の問題点・改善策の検討を行う。 第二の目的に関し、日本経済法学会(2019年10月)において、ドイツにおける行政処分に基づく消費者被害回復に関する研究を踏まえ、我が国での行政処分に基づく消費者被害回復の可能性について、報告を行う。これについては、同学会誌に論文を掲載する他、現時点までの筆者のこれに関する研究の集大成的な内容の論文を公表し、その後の研究の礎にする予定である。そこにおいては、従来我が国でまだ明らかにされていなかったEU消費者保護協力規則(2017年)についても、検討を加える。 これらの研究のために、ドイツでの現地調査および資料収集等を行うこととする。
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Research Products
(10 results)