2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Professional Responsibility of Lawyers in Japan - Focusing on Confidentiality and Conflict of Interest
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17K03516
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 准教授 (10453987)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 法曹倫理 / 専門家責任 / 弁護士倫理 / 弁護士制度 / プロフェッション / 専門家倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、日本における弁護士懲戒事件の実証研究の結果を日本語英語で論文公表することができた。さらに、アメリカにおいて利益相反が裁判所によってどのように規律されているかについても論文でまとめることができた。日本においては未だ利益相反に関する裁判事例はあまり多くないため、実務においても有益な研究成果を公表できたと考えている。加えて、アメリカにおけるプロボノ活動に関する著書の日本語翻訳も公表した。法曹養成教育と、弁護士の公益性の滋養の関係性を探る実証的な研究書であり、日本における法曹倫理教育の在り方を考えるうえでも有益な基礎資料を翻訳公表することができた。 理論的変遷の研究については、未だ研究成果としての公表がかなっていないものの、アメリカ、EUにおける守秘義務、利益相反に関する文献の検討を行った。さらに、アメリカにおける守秘義務、利益相反の考え方の根幹部分にある、弁護士依頼者間の信認関係について検討し、依頼者の利益を保護するための実質的な制度的枠組みについて、法曹倫理国際シンポジウムで報告する機会を得た。 加えて、アメリカワシントン州の弁護士会を訪れる機会を得たため、実際の制度運用担当者にヒアリングを実施し、この結果についてもシンポジウムで早期に公表することができた。 日本国内では、論究ジュリスト(夏号)に、ごく基本的な弁護士の倫理の考え方を解説する論考を公表し、弁護士の基本倫理である誠実義務、守秘義務、利益相反の規律の根拠と今日的課題について論じることで、日本における理論的課題を改めて整理することができた。 総じて研究の公表については順調であったが、強いて言えば、EU、イギリスの文献についての検討がやや遅れており、平成30年度はこれを取り戻し、さらなる積極的な研究成果の公表を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の公表は予定していた以上に順調である。国内外で関連する学会報告を7件、論文は5本、著書は1冊公表することができた。 一方で、本年度、来年度にかけた長期的な視野からの検討、研究活動に割く時間がやや欠けていたように思われ、総じて「おおむね順調」と評価するのが妥当と考える。 当初予定していたメキシコでのアメリカ法社会学会への出張を含め、海外への出張に校務や家庭の事情で出られなかったり、現地でのヒアリング等の調査実施に制約が生じたものの、文献調査についてはおおむね予定通りの資料収集ができている。一方で、日本国内では、平成29年度も多くの実務家と公式非公式な会合で意見交換をする機会を得られたため、弁護士が実際に感じる倫理問題について、情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
家庭の事情で海外出張を控えており、欧州弁護士会(CCBE)に実際に出向いてのヒアリング実施が困難な可能性があるものの、そのような場合には、電子メールでの照会を含め、代替的措置による情報収集を行っていく予定である。 懲戒判断情報の収集、分析については、既に平成29年度から着手しており、順調に進められる予定である。 本年度も、積極的に研究成果を国内外で公表していく予定である。 資料の収集や、分析のためのデータ入力のためには、リサーチアシスタントを雇用するなど、できる限り合理化に努めていく。 また、関連する研究機関のホームページを利用して、研究成果を早期に発信していくことも心掛けたいと考えている。 理論的側面(タテの軸の展開)と実務の規律の側面(ヨコの軸の展開)を同時に検討することで、来年度の最終的な研究成果公表を見越した研究を実施する。早期の公表のための検討と、長期的視野に立った検討を計画的に行い、時間配分を工夫したいと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していたメキシコで行われたアメリカ法社会学会への出席ができなかったため、旅費分が余剰額となった。本年度の学会出張費として使用する予定である。加えて、日本で実施予定のヒアリングのテープ起こしや、英文雑誌への投稿のための英文校正費用等、有効に研究活動および研究成果公表のために用いる予定である。
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