2017 Fiscal Year Research-status Report
現代アメリカ政党の「支持者連合」形成の変容:選挙過程の集票戦略を中心に
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17K03522
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 将人 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80588814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政党 / 共和党 / 民主党 / 集票 / アウトリーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
前回までの科研課題で達成した分極化と支持基盤のネットワーク形成の前提となる政党に関する文献研究と資料蓄積に加え、現地調査により、政党と選挙運動の基礎研究を継続した。第1に、オバマ政権期の「支持者連合」維持の特質の整理、第2に、2000年代以後のアメリカの新たな政党研究の検討から、「支持者連合」の形成に政党が果たした役割の中にオバマ政権期の試みの特質を位置づけ、第3に、2016年大統領選挙における党内分裂の修復方向を確認した。ワシントン、シカゴ、アイオワなどでは、政党全国委員会、州委員会、活動家、政党と同盟的関係にある利益団体などにおける非公開資料収集と聞き取り調査を行なった。必ずしも伝統的「保守主義」を標榜せず、経済的に部分的に「大きな政府」を是認し、自由貿易を否定し、文化的には保守層にアピールするドナルド・トランプの台頭以後、共和党指導部は「特別代議員」制度を導入してでも予備選挙過程からトランプ的な党内運動を排除するか、政党の「支持者連合」の一角に招き、宗教保守、リバタリアンなどに続く新たな草の根支持基盤とするのかは注目点であり、その点に絞った調査を広範に実施した。新たなデジタル技術の効能は、「地上戦」支援,「空中戦」の代替など候補者や争点次第で機能の発揮のされ方が流動化する可能性を明らかにしたほか、支持者連合形成と維持の一層の複雑化も浮き彫りにした。トランプ大統領のコアな支持基盤は「反エリート」の政治の素人であり、彼らが政党の活動家として共和党に定着するかは未知数であり、公約を政権が実現できなかった場合に幻滅する離反リスクは少なくない。他方、民主党が白人労働者層を党内に取り戻すのか文化リベラル路線を強めるのか支持者連合の形成をめぐる決断を迫られている状況についても現調査で分析を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は先行研究の文献調査による基礎研究を中心に行う予定であったかが、予定していたオバマ政権期の特質、2016年大統領選挙が政党に与えた余波の総括の双方をめぐる現地調査において、調査対象となる政党、活動家、利益団体などの聞き取り調査も円滑に進んだ。その成果の一部は2016年大統領選挙の総括として「選挙研究」論文等で発表した。これらの知見は海外での口頭報告にも反映され、国内外の研究者からフィードバックを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の基礎研究を土台に、トランプ政権初年度の特質、2018年中間選挙過程における政党の支持基盤の取り込みを現地調査も交えて分析する。とりわけ支持者連合の形成過程におけるメディアの役割、選挙運動と政党の調査においてアウトリーチ(Outreach)の過程を観察する。アウトリーチは、人種・エスニック集団や利益団体に、政党の選挙に協力する (参加する)インセンティブ(集団や団体の勢力拡大や争点への影響力増大)を与え、結果として、活動家の無党派化や政党離れを食い止め政党に再包含し、同じ政党の候補者への共通帰属意識を高め分割投票を是正することから政党中心志向を育成している可能性があるが、それが「 人口動態」「分極化」「新技術」とどう影響し合っているかについて明らかにする。政治エスタブリッシュメントと非エスタブリッシュメントの分断が先鋭化するトランプ政権下の政治的特質を踏まえた分析に留意する。
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