2018 Fiscal Year Research-status Report
調整型市場経済レジームの構造的再編をめぐる長期的政策変化の分析
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17K03524
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 調整型市場経済 / 企業統治 / 政策過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、調整型市場経済に分類されてきた日本型経済レジームの構造的再編の過程で企業活動に対する規制強化を意図する政策がなぜ実現したのかを長期的視座から解明することにある。この目的の達成に向けて、平成30年度は、主として、企業統治改革に関する政策過程の事例研究に取り組むとともに、競争政策(独占禁止政策)の政策過程の事例研究に向けた予備的調査を行った。 企業と政治の関係について、これまでの先行研究は二つの異なる見解を示してきた。一つは、政策過程における企業・経済勢力の構造的特権性や優越的地位を強調する企業権力構造論である。今一つは権力構造の分散的多元性を強調する多元主義論である。前者は経済勢力の「強さ」を強調するあまり、ときに、経済勢力の利益を阻害するような政策決定が成される理由を説明できない。他方、後者もまた政策過程における国家の自律性や重要性を看過している。ただし、この点はすでに1980年代に国家論(ステイティズム)の論者によって指摘されている。 本研究は国家論の問題意識を受け継ぐものだが、しかし国家論もまた理論的課題を抱えている。国家論は国家内部の権力構造をブラックボックスとして扱うが、実際には国家内部における権力構造も動態的であり、その変化が政策過程に影響を及ぼす。日本では政官関係における権力構造が近年大きく変わり、政治主導とりわけ首相及び官邸への権力集中化が顕著に進み、それに伴って政策過程にも変化がみられる。 今年度はこのような理論的関心に基づいて、政治学者のポグントゥケとウェブが提唱している「政治の大統領制化」論に依拠しつつ、第二次安倍政権下での企業統治改革の事例研究を行った。首相・官邸主導型の政策決定によって、経団連などが反対していた企業統治改革が実現したことを明らかにした。競争政策でも同様の特徴が見出されるかどうか、事例研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた国際学術誌への論文投稿は成し得なかったものの、事例研究を着実に進め研究成果を発表することもできたので、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き理論的検討を深めつつ、事例研究を着実に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学術誌への論文投稿に伴う支出が発生しなかった一方、理論研究や事例研究をいっそう深めるために書籍購入等を増やした結果、当該年度の所要額にほぼ相当する支出額となったが、若干の残額が発生したことに伴うものである。しかし次年度使用額は少額であり、研究計画全体に対する影響はほぼ皆無である。とはいえ、次年度使用額も含めて着実に予算執行を行えるよう研究を進めていくため、次年度使用額は事例研究に必要な書籍の購入代に充てる予定である。
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