2020 Fiscal Year Research-status Report
調整型市場経済レジームの構造的再編をめぐる長期的政策変化の分析
Project/Area Number |
17K03524
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 調整型市場経済 / 競争政策 / 政策過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、調整型市場経済に分類されてきた日本型経済レジームの構造的再編の過程で企業活動に対する規制強化を意図する政策がなぜ実現したのかを長期的視座から解明することにある。この目的の達成に向けて、2020年度は、主として、競争政策(独占禁止政策)の政策過程の事例研究を進めた。 この四半世紀余り、日本を含む世界各国は経済のグローバル化の波にかつてないほどにさらされてきた。経済的グローバル化には多様な側面があるが、一般的には市場経済の自由主義化が顕著に進むことを含意する。新自由主義思想の下では、政府は市場経済の成長可能性を阻害する、非効率的な存在として扱われる。したがって、新自由主義に依拠するならば、19世紀以降、積極国家化や福祉国家化に伴って拡大してきた国家の役割を大幅に見直し、むしろそれを縮小させることこそが、政府の重要な課題となる。しかし、これらの見方はどの程度正しいのだろうか。確かに、新自由主義の浸透は国家の役割を限定化させ、政府による市場や社会への介入を抑制する方向に働いてきたのは事実である。しかし、それは果たして国家機能の全面的縮減を意味するのだろうか。 本研究では競争政策(独占禁止政策) に焦点を当て、自由主義化が進むなかにあっても、むしろ国家の機能強化が図られてきたことを明らかにした。それまで、日本の独占禁止政策の運用実態は国際的に見て低調であったが、とくに1989年の日米構造協議を契機として、市場メカニズムを十全に作動させるには競争政策を通じて政府が競争環境を整備することの必要性・重要性が認識されるようになった。それ以降、独禁法改正による規制の強化や同法を所管する公正取引委員会(公取委)の組織体制の拡充が図られていった。自由主義化は単に国家の縮減を意味するわけではなく、逆に国家による規制の強化につながる側面もあるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルスのパンデミックによって、学術面だけでなく、社会・経済全体の活動が著しく低下した。研究成果を発表する予定であった国際学会も延期されるなど、本研究についても十分に遂行させることができなかった。そのため、研究計画を延長せざるを得なかったが、ある程度成果はまとまりつつあり、20年度には予定とは異なる別の国際学会で報告することができた。こうしたことから、やや遅れてはいるものの、次年度には研究を終えることができるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に延期が決定された国際学会は、21年度に開催されることとなり、本研究に関連する成果を発表する予定である。その後は、論文として成果をまとめ、学術誌に投稿することを考えている。また、発売が延期されていた学術書についても、21年度中には刊行される目途が立ち、同書に収載される論考でも本研究の成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより当初予定していた国際学会が延期されたことに加え、学会報告後に行う予定であった学術誌への論文投稿に伴う支出が発生しなかったたためである。次年度使用額は、これらの国際学会への出席、学術誌への論文投稿を目的としたもので、研究計画をさらに進めるために必要なものである。着実に予算執行を行えるよう研究を進めていく。
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