2018 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける地方自治体の広域化とそれに伴う公共政策過程変化の研究
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17K03525
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐川 泰弘 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (50311585)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フランス / 地方制度改革 / 中央-地方関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度については、2017年度に引き続き、(1)フランスの中央-地方関係分析や両者間の政策過程に関わる学術的研究成果の収集を行いながら、研究動向に関するレビュー論文を執筆・公表することと、(2)フランスにおける実際の地方制度改革の動向把握を行うことを計画していた。本経費を用いて8月後半に渡仏し、パリのフランス国立図書館や大学図書館等で資料収集を行いながら、(1)について論文「近年のフランスにおける中央-地方関係論の動向」を執筆し、査読を経て、日仏政治学会誌にて公表した。 そこでは、以下の点を明らかにした。フランスにおける中央ー地方関係に関する研究は、1990年代中葉まで「地域権力」論を中心に盛んに行われたが、以後ガバナンス論に取って代わられ、衰退したように思われた。しかしながら、近年、G. Pinsonや R. Epstein らがガバナンス論を批判的に検討し、中央-地方関係における国家の再浮上(「遠くにあり」地方を「遠隔操作」する国家)を都市計画政策分野を例に指摘している。2000年代からのNPM的国家改革、行財政改革の中で、国家機関は地域から一層排除されていくものの、国家が「遠くから」定めた仕切りの枠内で競争させられる「競争的調整」を組織し、地方 は拘束の中で主体的に事業を定め、実施していくという関係ができている。つまり、中央-地方間には態様を変えた垂直的な関係が再登場している。 (2)については、基本的な資料は入手できたが、それが実際の政策過程やアクターの行動にどう影響を及ぼしているかまでは判然としておらず、R. Pasquierらの先行研究に着目し、把握に努めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画2年目であったが、基礎的な資料収集や状況把握を行った上で、フランスにおける中央-地方関係に関する分析の近年のトレンドについての論考を公表することができた。フランスにおける地方制度改革の動向把握も進んでいる。一方で、制度改革が実際の政策過程やアクターの行動にどう影響を及ぼしているかまでは把握途上であるため、このように評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
フランスのレジオン制度の変化に合わせ、従来のマルチ・レベル・ガバナンスの枠組みや政策過程がどのように変化しているのか、制度改革がアクターの行動にどのような影響を及ぼしているかについて現地研究者による先行研究も必ずしも多くはないが、引き続きフランス現地において資料収集を行うと共に、現地研究者との意見交換を行う。さらに、新たに設置された「メトロポール」の権限や機能について、時間が許す限り現地調査を試みる(ボルドーを想定)。 また、近年のフランスにおける地方制度改革、マクロン政権以降の地方が置かれた状況についての論考を準備する。
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Causes of Carryover |
渡仏の上、資料収集や現地調査を行ったものの、本務との関係で旅行できる時期や期間が制約され使用した旅費が当初予定よりも少なくなった。次年度も渡仏の上、地方都市での調査も予定しているため、主にそのための旅費と書籍等の資料購入費として使用する。
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