2017 Fiscal Year Research-status Report
「政治的なもの」の理論の再構築:批判的営為の位置づけ
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17K03526
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
乙部 延剛 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (50713476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治的なもの / 政治的なるもの / 政治理論 / 政治哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は交付申請時の計画どおり、英語圏を中心とした「政治的なもの」をめぐる政治理論の業績の再検討に取り組んだ。この再検討を通じて、1)「政治的なもの」の研究がこれまで辿ってきた道のりを明確にするとともに、2)現在、「政治的なもの」の研究が直面している課題および、3)現在それらの研究が有する可能性を明らかにすることを目指した。 1)に関しては、「政治的なもの」の研究が、大陸系の政治哲学を中心に論じられてきた過程を跡付け、論文として刊行した(乙部延剛「対抗する諸政治哲学」『ニュクス』4号、2017年、乙部延剛「<政治的なもの>から<社会的なもの>へ?ーー<政治的なもの>の政治理論に何が可能か」松本・山本編『つながりの現代思想』明石書店、2018年)。 2)に関しては、「政治的なもの」が明快な秩序構想を描けなかった問題、社会経済的な領域を適切に論じられなかった問題、そして、近年では「政治的なもの」の条件そのものを掘り崩すような研究が進められていることを明らかにし、論文として刊行した(乙部上掲「<政治的なもの>から<社会的なもの>へ?」および乙部延剛「政治哲学の地平」『現代思想』45巻21号、2017)。 3)に関しては、存在物の次元を適切に取り込む必要や、「政治的なもの」の条件について再検討を行うことで、「政治的なもの」の可能性が引き出せるのでないかと論じた(乙部上掲「政治哲学の地平」および「<政治的なもの>から<社会的なもの>へ?」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の計画では、本年度は「政治的なもの」の過去の研究を再検討を通じ、「政治的なもの」の研究が一時に比べ低調となった理由を明らかにすることを目的としていた。 しかしながら、実際に研究を進めた結果、単に理由を突き止めるだけではなく、当該理由に対する処方箋、すなわち「政治的なもの」の研究が現在でも有する意義と進むべき方向性についても、一定程度は示すことができた。研究成果としても、3つの論文を刊行することができ、予想以上の成果をおさめることができた。 他方、「政治的なもの」の研究を主導した個別の論者の研究については若干おろそかになってしまった。これは研究の進展に伴い当初の計画から方針を調整したことに主によるが、今後も出来る限り、個々の論者の検討も行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の計画にあったように、「政治的なもの」の研究が現在なお有する意義と可能性を明らかにし、いかなる形で「政治的なもの」の研究を進めていくべきかを明らかにするのが今後の課題である。「現在までの進捗状況」の部分でも記したように、これらの課題について、大まかな方向性は既に得られているので、今後より精緻化していく方向で研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
主に申請者の私的な事情により、本年度は予定していた海外での学会報告をいくつか断念せざるを得なかった。その結果、当初よりも旅費の使用が少なくなった。 なお、断念した報告のかわりに、ソウル国立大学で報告を行うなどして(旅費は開催者負担)、研究に関して多くのフィードバックを得ることができた。それゆえ、研究の進行自体には支障といえるものは発生していない。 平成30年度以降は再び海外での報告予定もあり、最終的には当初予定した費用を使用することが見込まれている。
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