2018 Fiscal Year Research-status Report
「政治的なもの」の理論の再構築:批判的営為の位置づけ
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17K03526
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
乙部 延剛 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (50713476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治的なもの / 闘技デモクラシー論 / アイザイア・バーリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、交付申請時の計画通り「批判的営為としての政治的なものの理論」の彫琢に取り組んだ。すなわち、闘技デモクラシー論、大陸系の(政治)哲学が注目してきた「政治的なもの」について、それが有した最大の意義を「限界を知る」という意味での批判的営為に見出した上で、それがいかなる形態によって発展しうるかを明らかにすべく試みた。 具体的には、以下の論考を報告、刊行した(刊行予定含む)。 1) 世界政治学会(IPSA)研究大会(2018年7月)で報告した"System and Machine: Turns to Macro-Scale Analyses in Contemporary Democratic Theories"では、闘技デモクラシー論や、その対向者として扱われる熟議デモクラシー論の近年の議論が、上で指摘したような批判的営為に接近していると論じた。具体的には、闘技デモクラシー論者ウィリアム・コノリーが近年展開する「共鳴機械」および、熟議デモクラシー論者ジョン・ドライゼクが提唱する「熟議システム」の議論を取り上げ検討した。 2) 日本政治学会研究大会(2018年10月)で報告した「<政治的なもの>とデモクラシー」では、マーティン・ヘグルンドが提唱する非規範的なデモクラシー概念を手がかりに、上記の批判的営為のあり方を検討した。 3)「価値多元論の政治学:森達也『思想の政治学:アイザイア・バーリン研究』をめぐって」(『政治哲学』25号)では、しばしば闘技的デモクラシー論等との類似性が指摘されるアイザイア・バーリンの政治思想について、森達也氏の研究の読解を通じて、価値多元論的な政治理論が取りうる様々な形態について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学会等で論考を報告し、また、書評論文を発表することができたものの、今年度は予定していた、海外の研究者との意見交換を持つ機会がなく、また、研究成果の発表についても、国際学会での報告は予定より少なく、世界政治学会で行った一回にとどまった。 このような遅れが生じた主な理由としては、私的な事情により、海外に出かける時間を確保できなかったことがある。2019年度は若干時間的余裕が増す見込みであるので、研究計画上で示した成果公表のスケジュールに復帰すべく取り組む。 なお、公刊した研究成果についても、本年度は少数に留まったが、昨年度に予定よりも多くの研究を進め、出版にこぎつけたことと、来年度の刊行に向けて進めている研究があることから、この点については遅滞なく進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2019年度は、「政治的なものの政治理論」を、明確な形で提示すべく進める。そのためには、これまで学会報告等で発表してきた成果を改めて一貫した構想にまとめなおして論文等の形で出版することを目指す。 【現在までの進捗状況】でやや遅れていると記した、海外の研究者との意見交換および国際学会報告については、2019年度は若干時間的余裕が増す見込みであるので、研究計画上で示した成果公表のスケジュールに復帰すべく取り組む。ただし、海外渡航の時間的余裕が確保できない場合に備えて、文献調査の比重を挙げ、論文等活字媒体での研究成果発表をより重視する等の対応を考えている。
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Causes of Carryover |
家族の事情により、海外渡航のための時間をつくることができなくなり、予定していた海外での国際学会発表および海外の研究者との意見交換ができず、その分の残額が発生することになった。 2019年度は幾分時間的に余裕も生じると思われるので、当初の使用計画に復帰すべく取り組む予定であり、海外渡航のための旅費等に充てる。
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