2017 Fiscal Year Research-status Report
The Irony of International Consumer Movement
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17K03527
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
井上 拓也 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (70291284)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 消費者団体 / 消費者運動 / 消費者政策 / 利益団体 / 利益集団 / 社会運動 / 市民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際消費者機構(Consumers International: CI)を中心とする国際消費者運動において、価格・品質など消費者の経済的利益よりも環境保護などその社会的責任が重視されがちなこと、しかもそれが先進国よりも経済的に豊かではない後進国の消費者団体によって推進されがちなことという皮肉な状況を、消費者団体の2つのモデルの相違によって説明することである。 CIは、先進国の消費者団体の主流モデルであり、物質的便益を選択的誘因として大衆基盤の多数の会員を集める顧客消費者団体によって、消費者の経済的利益の実現を目的として設立され、現在もそれらの団体によって財政的に支えられている。しかしそこでは、北欧など先進国の一部、および後進国の消費者団体の主流モデルであり、精神的便益を選択的誘因として意識の高い少数の会員を集める市民消費者団体が多数を占め、消費者の社会的責任が重視されるようになっているということが、本研究を通じた仮説となっている。 平成29年度は、この因果関係を伴う仮説を検証するための前提として、前述のようなCIを初めとする国際消費者運動の皮肉な状況を把握するために、CIの組織、財政、政策の歴史的な分析を実施した。しかしそれは、残念ながら現地での調査を実施できなかったため、国内での文献調査に止まった。具体的には、関連する著作、およびCIがイギリスで法人格を取得していることから、CIが同国のCompanies Houseに提出した法人制度および税制上の文書の検討である。とくに後者の検討を通じて、CIの組織と財政を中心とする歴史的な変遷を把握することができた。しかし現時点では、それを業績として発表するまでには至っていない。これから実施する現地での調査と合わせて、できるだけ早く業績として公表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度の活動は、当初予定していたイギリスでの現地調査を実施できず、国内での文献の検討に止まった。その背景には、まことに私的なことであるが実父の入院・逝去という家庭の事情、および入試改革等に伴う校務の増大という事情がある。また、国際消費者運動を検討する前段階として、先進国の主要な消費者団体の検討が十分に行われておらず、それに関連する原稿を執筆していたため、本研究が直接の対象とする課題の原稿には手が回らなかったという事情もある。しかしいずれにしても、本研究に遅れが生じていることは事実なので、本年度以降に挽回していきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、まずイギリスのロンドンで、CI本部、大西洋消費者対話(TACD)、国際消費者研究テスト機構(ICRT)を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施する。次にアメリカのヨンカースで、消費者同盟(CU)を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施するとともに、ソルトレイクシティで共同研究者と打ち合わせを実施する。同共同研究者には、場合によっては日本を訪れてもらう場合もある。 平成31年度には、ヨーロッパ5カ国で、主要な消費者団体を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施する。また場所は未定であるが、同年度にCIの世界大会が実施されることになったので、そこに出席し、とくに後進国の主要な消費者団体からの出席者を相手に、効率的にデータの収集および聞き取り調査を実施できる予定である。 平成32年度には、マレーシアのクアラルンプールで、CIアジア太平洋支部を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施する。またチリのサンティアゴで、CIのラテンアメリカ支部を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施する。この2回の現地調査は、前年度にCIの世界大会での調査が実施されていることから、研究当初に予定していたものよりもはるかに容易に実行される予定である。最後に、アメリカのソルトレイクシティないし日本で、共同研究者と研究をまとめていくことになる。
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Causes of Carryover |
理由は、平成29年度中に、家庭の事情、校務の増大、本研究が直接の対象としない原稿の執筆等のために、本研究の進展に大幅な遅れが生じたためである。 次年度使用額の利用計画としては、平成30年度に、昨年度実施予定であった、イギリスのロンドンで、国際消費者機構(CI)本部、大西洋消費者機構(TACD)、国際消費者研究テスト機構(ICRT)を訪れ、データの収集および聞き取り調査を実施する。また、ユタ大学の共同研究者との打ち合わせを、本人が渡米して実施するか、共同研究者が訪日して実施するかは未定であるが、同様に平成30年度中に行うことになる。昨年度の未使用額は、これらの活動に充当する。
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