2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of areas where environmental destruction and industrial collapse occurred in East Germany
Project/Area Number |
17K03530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安達 亜紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (60724507)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東ドイツ / 環境 / 地域活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
旧東ドイツ時代の環境破壊や環境保護運動、それらと関連があったベルリンの壁崩壊前の市民運動については、既に様々な研究がなされているが、旧東ドイツで深刻な環境汚染が生じた地域の再生に焦点を当てた社会科学的な研究は、あまりなされてこなかった。このため、本研究は東西ドイツ統一から30年が経過する2020年に向けて、その環境対策や地域再生への試みについて調査、分析した。 事例として採り上げたドイツ中部のビッターフェルトは、旧東ドイツ時代に化学産業と褐炭産業が集積し、適切な環境対策がなされなかったために深刻な環境汚染が生じた。さらに1990年の東西ドイツ統一後に起きた産業崩壊や住民の流出も加わり、環境・経済・社会のすべての側面において重大な打撃を受けた。その一方で、統一後は連邦や州からの財政的支援を受けて、環境対策と並行し、インフラの整備や国内外の企業誘致、観光の振興等、地域の再生に向けた様々な政策が採られてきた。旧東ドイツ時代の深刻な地下水汚染は現在も残されているが、2007年7月の合併によって誕生したビッターフェルト・ヴォルフェン市におけるこれらの取り組みは、今日では1つの成功事例として捉えられる。 ただし、環境に配慮した形での地域再生は、他の旧東ドイツ地域でも同様に成功している訳ではなく、地域間で格差も生じていると考えられる。例えば、ドイツ東端に位置する地域のラウジッツは、褐炭の一大産地で旧東ドイツ時代にエネルギー供給を支えていた。東西統一後、褐炭採掘場は減少したが、褐炭産業はその後も基幹産業であり続けた。そして現在は、ドイツの気候変動政策で最重要課題となっている2030年代までの「脱石炭」によって、最も大きな打撃を受ける地域とみなされている。今後の研究ではラウジッツ等、旧東ドイツの他の地域に関する調査、分析も進めると共に、EUレベルの政策決定による地域への影響についてもさらに考察したい。
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Research Products
(1 results)