2021 Fiscal Year Annual Research Report
comparative political studies on the effects of constitutional political institutions and governmental coordination capabilities on income redistributions
Project/Area Number |
17K03532
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
桐谷 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30225106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 所得再分配 / 社会協定 / 政治制度 / コーポラティズム / 政府能力 / 政策協調 / 所得格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一に、本研究課題の重要な視点である「政府調整能力」について、昨年度の成果を踏まえて、その調整能力を具体的に示す概念である「社会協定」と「政策協調」の両概念の差異と類似性に関して、理論的に考察を加えた。この両概念をめぐっては、コーポラティズム衰退論の是非の問題も絡んで、政策協調から社会協定へという議論のなかで、両者の同質的発展を強調する「連続説」と、両者の質的差異を強調する「断絶説」とのあいだで論争が行われていた。本年度は、それらの議論が、しばしば限定された要素をもとになされており、その社会構造的背景や制度的文脈の差異といった、より包括的な観点から両概念を体系的に識別する必要性を指摘し、両概念の類型化を試みた。 第二に、そうした政府調整能力に係わる政策協調と社会協定を主たる独立変数にして、本研究の課題である政府の「所得再分配」機能との関連性について、各種の限られたデータを基にして探索した。ここでは、政策協調や社会協定の強さと、政府の再分配の大きさとのあいだには正の相関があるのでないかいう仮説をたて、様々な制御変数なども考慮しながら、いくつかの分析モデルで立てて験証したが、有意な関連性を見出すのは困難であったため、再検討を迫られることとなった。 第三に、本研究では、もうひとつの独立変数群として各種の制度変数をあげていたが、本年度も、いくつかの制度変数と所得再分配との相関関係について験証を試みた。その結果、選挙制度に係わって比例代表制の強度を示すギャラガー指標などが、やはり所得再分配の大きさと正の相関関係にあることがしばしば見出された。しかしながら、頑強性が乏しい場合も多々あり、今後のさらなる検討が必要であることも示唆された。
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