2017 Fiscal Year Research-status Report
ピューリタン革命における共和主義思想の研究:国家論と教会論の相互関係の視角から
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17K03546
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大澤 麦 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (30306378)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共和主義 / ピューリタニズム / クロムウェル / ピューリタン革命 / 護国卿 / 立憲主義 / 成文憲法 / イギリス革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ピューリタン革命期(1640-60 年)の共和主義思想の動態と特質を、同時代の国家論と教会論の相互関係の視角から明らかにすることにある。 この目的のために本年度は、研究初年度として、本研究全体の基礎となる共和主義思想のコンテキストの解明に向けて、とりわけ当時の教会体制の変容過程についての基礎文献・資料の精読に研究の大きな比重を割いた。具体的には以下の2つの項目とその文献の検討を行った。(1)主教制廃止後の国教会制度を検討するために、1643年に設置された議会の諮問機関であるウェストミンスター神学者会議についての次の資料を検討した。Chad Van Dixhoorn, David F. Wright,Mark A. Garcia, Joel A. Halcomb and Inga Jones, eds., The Minutes and Papers of the Westminster Assembly, 1643-1653, Oxford U. P., 2012. (2)O・クロムウェルの護国卿体制の教会制度の理念と制度に大きな役割を果たしたと言われるJ・オーウェンの著作集(Complete Works of John Owen, 16 vols., Banner of Truth, 1996)を検討した。 また、上記の検討と併せて、当時の代表的な共和主義者であるジョン・ストリーター(John Streater)の運動と理念の分析を行った。これについての研究成果の一部は、後続の「研究発表」の項に記載したとおり、第12回日本ピューリタニズム学会研究大会での研究報告と学会誌『ピューリタニズム研究』への投稿論文(査読あり)という形で公表することができた。 なお、今年度の研究を遂行するにあたっては、本研究に深くかかわる政治思想学会(5月)と社会思想史学会(11月)の研究大会に出席して、関連諸分野の研究者との意見交換を行うことで、知見を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は上記「研究実績の概要」にも記したとおり、本研究全体に関わる基礎文献・資料の精読に力を入れる予定であった。この点については、ほぼ順調に研究は進んだと考えている。 またこれと並行して行った共和主義者ジョン・ストリーターの研究では、初年度において、学会発表と査読付き学会誌投稿論文という形で成果を公表することができた。 以上述べたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に遂行した研究を下地にして、以下の2つの項目について重点的に研究を行うことで、本研究全体を完結させる。 (1)共和主義のカノンと目される著作を残したマーチャモント・ニーダム、ジョン・ミルトン、ジェームズ・ハリントンの検討と再評価を行う。その際、彼らの教会構想に大きな比重をおいた分析をすること、また広く共和主義全体の潮流の中に彼らを位置づけることによって、本研究の独創性を示したい。 (2)王政復古直前期の共和主義主義の隆盛に着目して、当時における王制と共和制の政体論的特質を解明する。これによって、今日も数多く存在する君主制国家における共和主義的理念の働きについての分析を試みる。 なお、こうした研究の途上において得られる個別的な研究成果は、学会発表や個別論文において逐次公表していくことを、可能な限り実行していきたい。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行においてはイギリスにおける資料調査と意見交換が必須であり、これを実施するための旅費を毎年度計上している。しかし、このたび所属機関である首都大学東京から望外にも次年度のサバティカル(特別研究期間)が認められ、長期にわたるイギリスでの研究調査が可能になった。よって、今年度に計上した旅費は次年度分の旅費と合わせて次年度に使用することが極めて効率的かつ合理的と判断した。 また本研究においてはイギリス政治思想、イギリス史等に関連する図書の購入が不可欠であり、この分の経費も物品費として計上している。しかし、これについても次年度においてイギリスの大学および国立図書館で時間をかけて読むことが可能となり、この分も次年度の旅費に充てて使用することが経費の計上趣旨からして合理的であると判断した。 総合すれば、今回生じた次年度使用額は研究計画全体を一層能率よく進めることに寄与するものである。
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