2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03562
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
今井 亮佑 崇城大学, 総合教育センター, 教授 (80345248)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 世論 / 熟慮 / 代表制 / 一票の較差 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究成果として挙げられるのは、本研究課題の根幹を成す「熟慮型WEB調査」を実施したことである。 本研究課題は、「日本の有権者がどのような政治制度の下で、どのような政治家を代表として国会に送り出したいと考えているか、言い換えれば『日本人の代表観』を明らかにする」ことを目的としている。これを具体化し、調査に落とし込む検討を昨年度来進めてきたが、その中で、今回はとくにいわゆる「一票の較差」問題に焦点を当てるとの考えに至った。「一票の較差をどの程度まで許容するか」に関する有権者の意識は、過疎過密・東京一極集中が一層進む日本において、人口が減少する地方の意見を代表する議員をいかにして、またいかほど衆参両院に送るべきかという問題に対する考えを示すものであり、まさに「日本人の代表観」の一端を表すと考えられるからである。 ただ、一般の有権者はふだん「一票の較差」問題について考えることなどないことから、この問題に関する質問を調査で単に尋ねただけでは、意味のある回答を引き出すことはできない。回答者に「一票の較差」問題に関する客観的・中立的情報を提示し、それをもとに「熟慮」してもらった上で、調査に回答してもらうのが望ましい。そこで、「一票の較差」問題に焦点を当てるとの考えがまとまった後、具体的な質問項目の選定を進めるのと同時に、回答者に提示する情報資料の作成を進めた。 このような準備を経て、2019年3月に第1波、4月に第2波の調査を、WEBパネル調査の形式で実施した。このうち第2波調査では、熟慮の影響を検証できるよう、「一票の較差」問題に関する熟慮を促す情報を提示するグループだけでなく、提示しないグループも用意し、回答者をランダムに振り分けた。なお、年度をまたぐ形のパネル調査としたのは、実験群・統制群それぞれに十分な数の回答者を確保するためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の段階では、目標回収数を第1波5000、第2波3000としていた。しかしながら、予算の関係上、実際には第2波の回収数は2000程度が限界であった。このため、第2波の調査では、「①二院制に関する情報を提示するグループ、②『選挙制度』に関する情報を提示するグループ、③『一票の較差』に関する情報を提示するグループ、④何も情報を提示しないグループ」の四つに分ける実験デザインを採用することを当初は想定していたが、実際には③と④の二つのグループにランダムに回答者を割り振ることとした。こうした変更はあったものの、「一票の較差」という重要ではあるもののこれまでの有権者調査では取り上げられることのなかったテーマに関する、2波のパネル形式による熟慮型WEB調査を初めて実施したことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
第1波調査と第2波調査のデータの結合及びクリーニングを行った上で分析にかけ、論文としてまとめて学会誌に投稿する。 また、コードブックの作成など、データ公開に向けた準備もあわせて進める。
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Causes of Carryover |
委託したWEB調査の支出額が想定を若干下回ったため。2019年度に入ってから既にパネルの第2波調査を実施したが、その費用の一部に充当する。
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