2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03568
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選挙管理 / 台湾 / 総統直接選挙 / 執政制度 / 「大統領制化」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、選挙管理機関の特徴とその民主化との関係を明らかにし、台湾における民主化を促した要因を再検討することにある。本年度は台湾の選挙管理にかかわる制度構築と制度改革をめぐる政治過程の歴史的考察を行う予定であった。しかし、本年度もまた昨年度と同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現地調査を実施できなかった。インターネットや国立国会図書館関西館を利用した文献調査のみとなり、当初計画の大幅な変更を余儀なくされた。 研究の具体的内容としては、昨年度の研究成果であった学会発表の内容をもとに学術論文をまとめ、同学会報にて「台湾の執政制度と総統選挙」として公表した。台湾の民主化の過程では、選挙管理機関(中央選挙委員会)により自由で公正な選挙が定期的に実施されるようになった。その総仕上げとなったのが総統直接選挙である。本稿では、政治制度としての総統直接選挙に焦点を当て、比較政治学の知見を手掛かりに、執政制度との関係から総統直接選挙(直接公選制)導入の意味、そして現行の執政制度である半大統領制が総統直接選挙にもたらした帰結について検討した。 研究成果の意義は、第1に、執政制度の変容という視点から、総統直接選挙の導入の意味を明らかにしたことである。総統直接選挙の導入は執政制度の性格を大きく変え、具体的には「中華民国憲法」が定めた「疑似的な議院内閣制」を「民選大統領のいる民主主義」の範疇に移行させた。第2に、台湾の半大統領制が総統直接選挙を特徴づけてきたことが、候補者擁立と選挙戦略における政党の「大統領制化」現象から確認できた。同時に、直轄市長の経験と実績が「有権者うけ」する総統候補の必須条件となりつつあり、「得票最大化」戦略が「台湾アイデンティティ」をめぐる競合となってあらわれる台湾固有の特徴も見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、海外への渡航と国内での移動と研究施設の利用ができない、あるいは大幅に制約される事態が続いた。そのため、台湾での現地調査は困難なまま、現地での文献調査やインタビュー調査が実施できなかった。国内での調査活動も大幅に制約され、本年度の研究活動が実施計画どおりに遂行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は国内での文献調査を行うとともに、休暇を利用した台湾での現地調査を予定しており、その実現を期待している。ただし、新型コロナウイルスの感染状況の先行きはいまだ見通せる状況にない。昨年と同様の情勢が続けば、台湾への渡航がままならず、現地での文献調査やインタビュー調査は困難となる。国内での調査活動もいつまた制約されるともかぎらず、2021年度と同様に研究実施計画どおりの遂行は難しくなる可能性は否定できない。そこで、文献の購入やインターネットを活用した文献調査を中心とし、調査・分析には可能な部分から柔軟に取り組んでいく所存である。あるいは、当初の研究計画の変更にも柔軟に対応したい。インタビュー調査はもし実施可能な条件が整えばその段階で関係者への意向確認を実施したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染状況が収束せず、予定した海外での現地調査は渡航困難により中止を余儀なくされ、国内での資料調査もほとんど実施できなかった。そのため、旅費を中心に計画どおりの使用が困難となった。本研究計画への取り組みが、学内業務や他の研究活動との関係で時間的に圧迫されてしまったことも助成金の使用計画に影響した。次年度には国内外での調査活動の実施を計画(期待)しており、それが実現できれば助成金の使用を適正化できる可能性が生まれてくると考えている。
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Research Products
(1 results)