2019 Fiscal Year Research-status Report
Otto Kirchheimer and the "catch-all party"
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17K03570
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 成蹊大学, 法学部, 教授 (50453973)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オットー・キルヒハイマー / カール・シュミット / フランツ・ノイマン / ヘルベルト・マルクーゼ / 包括政党 / 競争的権威主義 / OSS |
Outline of Annual Research Achievements |
雑誌『思想』2020年7月号に、論文「「包括政党」以前のオットー・キルヒハイマー――政治科学者の政党研究と政治思想研究者の政党研究 」を執筆した。キルヒハイマーによる1930年代のワイマール時代の考察と、1960年代の「イデオロギーの終焉」についての考察の関係を、政治思想史の方法論という特集テーマに即して論じた。 日本政治学会研究大会の「共通論題」(2019年10月、テーマ:リベラル・デモクラシーの衰退?)で、「1932年のカール・シュミット 」と題する報告を行なった。ナチが政権を掌握する前年(1932年)のシュミットの動向を追いながら、政党政治の崩壊の過程から逆照射する形で政党政治の論理について考察した。違う言い方をすれば、今日の「競争的権威主義」の問題を、「1932年のシュミット」についての考察から考えてみたのが、この報告である。フランツ・ノイマンとオットー・キルヒハイマーは、このときのシュミット の思考に注視しており、その影響は継続することになることもわかった。 オットー・キルヒハイマーが、フランツ・ノイマン とヘルベルト・マルクーゼとともに戦時中に亡命先のアメリカで執筆した『フランクフルト学派のナチ・ドイツ秘密レポート』(みすず書房)を翻訳し、刊行した。この翻訳によって、従来ほとんど注目されてこなかった、フランクフルト学派系の研究者による政党政治や野党(オポジション)についての考察の資料を提供することができた。 ナチ・レジームの崩壊後に、いかに政党政治を立て直すかという課題で書かれたいくつかの章は、本科研のプロジェクトの課題と重なる。政党政治におけるナショナルな方向性とソーシャルな方向性の絡み合い、「まとまれない野党」の問題など、ここで分析されているのは、今日的なテーマでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の成果を発表することはできている。 しかし、大学の学内業務や家庭内の問題が理由で、予定していた出張ができておらず、その点で若干の遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの影響で、海外出張が極めて難しい状況になっている。 しかし幸い、各種図書館や古文書館で、郵便などの形での資料提供が受けやすくなっているので、可能なかぎり、別の手段による資料収集を行いたい。
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Causes of Carryover |
前年に予定していた調査出張の日程を、学内業務のため短縮したことにより、差額がでた。新年度に、資料収集費として用いる予定である。
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