2019 Fiscal Year Research-status Report
国際貿易レジームと政治的支持関数に関する2レベルゲーム分析
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17K03585
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 馨 神戸大学, 経済学研究科, 名誉教授 (20184509)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 3国間貿易交渉モデル / 政治的支持関数 / 2レベルゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、国際貿易レジームの相違や各国の政治経済制度の相違を考慮しながら、ある国の国内政治圧力の増大が貿易相手国の政治的支持関数に及ぼす影響について検討することを目的にしている。本年度は、政治経済的に非対称な3国間の貿易交渉モデルを2レベルゲームの枠組みで構成するために研究を進めた。既に構築されている2国間の貿易交渉モデルを再構成し、さらに政治経済的に非対称な3国間のモデルへ拡張することを試みた。このようなモデル構築において、以下の2点を中心に研究を進めた。 第1に、国際貿易交渉の理論的な検討については、従来の貿易交渉モデルを2レベルゲームの枠組みで政治経済的に非対称な3国間の貿易交渉モデルに拡張することを試みた。これまでに構築されている対称的な2国間の貿易交渉モデルを再構成すると共に、さらに非対称的な3国間の貿易交渉モデルへ拡張した。特に、3国間の国内経済制度の非対称性と国内政治制度の非対称性に注目しながら分析を行った。国内経済制度の非対称性については構造改革の相違を考慮したモデルを構成し、国内政治制度の非対称性については政治制度の相違を取り上げた。これらの政治経済的な制度上の非対称性が各国の政治的支持関数に及ぼす影響を分析できるような3国間の貿易交渉モデルの構成を試みた。 第2に、政治的支持関数に関する実証的な検討については、各国の政治的支持関数の形状を推計するために各国のマクロの政治経済制度のデータ収集を試みた。また個別の国家を特定し、ミクロの家計の個票データの収集を昨年に引き続き実施した。各国のマクロの政治経済制度のデータ収集については、必ずしも容易ではないことが判明してきた。ミクロの家計の個票データについては、昨年度に引き続き個別面接方式のプレテストをカンボジアで実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論と実証の面から状況を確認しよう。国際貿易交渉の理論的な検討については、従来の貿易交渉モデルを2レベルゲームの枠組みで政治経済的に非対称な3国間(米国・中国・日本)の貿易交渉モデルに拡張することを試み、概ね順調に進行している。政治的支持関数に関する実証的な調査については、国際社会におけるマクロの政治経済制度のデータ収集は必ずしも進捗しているとは言えない。しかし、ミクロの家計の個票データのプレテストは概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が科研費の最終年度である。今後の研究については、昨年度に引き続き、政治経済的に非対称な3国間の貿易交渉モデルを2レベルゲームの枠組みで構成するために研究を推進する。既に構築されている3国間の対称的な貿易交渉モデルを再構成し、さらに政治経済的に非対称なモデルへ拡張する必要がある。このようなモデル構築を含め、今年度に検討すべきは以下の3点である。第1に、多様な国際貿易レジームを比較分析できるモデルを構成することである。そのためには、各国の政治経済的な非対称性について、より現実に近い状況を想定したモデル構築が必要になる。第2に、3国間の国内経済制度の非対称性の相違が各国政府の政治的支持関数に及ぼす影響が分析可能なモデルを構築することである。第3に、政治的支持関数に関する実証的な調査については、国際社会におけるマクロの政治経済制度のデータ収集をいっそう推進すると共に。ミクロの家計の個票データのプレテストをさらに進める。
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