2017 Fiscal Year Research-status Report
Social Impacts of Kaizen in Developing Countries
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17K03587
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
島田 剛 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (90745572)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カイゼン / 産業政策 / 生産性 / 対日援助 / 労働組合 / 民間セクター開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が目的とするところは、日本が被援助国であった時にどのようにアメリカの生産性向上支援を受容していたかを検証し、被援助国としての経験がどのようなものであったのか導き出すことである。当該年度は国内における資料収集結果に基づき論文を作成し、現在、査読中である。また、2018年度6月の国際開発学会において発表する予定である。これまでのところで興味深い発見は次の通り。 第1に、戦後のカイゼンの対日援助のかなりの部分が対ソビエトの文脈で行われていたことである。これは東西冷戦の中で、カイゼンを日本に導入することにより、労働者を共産化させず西側に取り込むことを狙っていたものである。そのため、日本側の経営陣よりもむしろアメリカ側がカイゼンの導入に熱心であったことがわかってきた。 第2に、日本において労使関係はもともと対立的であったが、援助を受け入れていく中で協調的な労使関係に変化していったことである。つまり、協調的な労使関係は日本においても生産性向上に取り組む中でむしろ作り上げられてきたのである。 第3に、米国・対日援助の受け入れにあたって、日本では政府ではなく民間セクター(特に経済同友会)が援助の受け入れに中心的な役割を果たしたことである。むしろ政府は活発な民間の動きを補助的に支える役割を担ったのであり、これは理想的な産業政策の在り方であったと言える。援助受け入れに当たって予算の半分(半年で1億800-3200万円)は日本が負担し、しかも政府ではなく大部分を民間が負担したのである。つまり、民間のコミットメントが高かったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容面では順調に資料を収集をすることができ、翌年度のワシントンでの調査に向けて順調な準備ができた。収集資料に基づく論文は、2018年度春の国際開発学会で発表予定であり、同じく秋に出版予定の同学会の「国際開発研究」の特集号の主要な論文として掲載されることが決まったため。 なお、同論文の拡大バージョンのペーパーがJICA研究所のODA歴史研究のバックグラウンド・ペーパーとして採択される予定で、こちらもJICA研究所のホームページに掲載される予定である。最終的には、この拡大ペーパーをさらに手を加え単著に仕上げる予定である。 なお、計画段階ではワシントン公文書館での調査を予定していたが、国立国会図書館経由でかなりのマイクロフィルムなどを見ることができることが判明し、計画を変更し当該年度は国立国会図書における調査を中心に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ワシントンでの調査に向けて準備を進める。また、今年度は後半では外務省やJICAに対してフィードバックをしていくことを検討しており、当面はそのための論文や発表資料などの取りまとめを行っていくが、セミナー開催などのロジ的な作業も多く、今後、実施方法を検討していくこととする。
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Causes of Carryover |
計画段階ではワシントンの公文書における資料収集を予定していたが、国立国会図書館でかなりのマイクロフィルムを保管しており、それを見ることでかなりの情報を得られることが分かった。そのため当該年度については、これらの情報を精査し逆に米国でなければ入手困難な資料と、その入手先を調べることに集中したため。
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