2018 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化とイギリス政治の変容~ブリグジットの淵源としてのサッチャー政権期
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17K03595
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
池本 大輔 明治学院大学, 法学部, 教授 (40510722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ブレグジット / グローバル化 / ポピュリズム / 欧州懐疑主義 / 政党政治 / 欧州連合(EU) / サッチャー政権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリスのEU離脱(ブレグジット)の政治内在的な説明を提供することを目的としている。具体的には、サッチャー政権期に起きた経済政策の刷新とイギリス政党制の再編成によって各政党の対EU政策が大きく変化したことが、ブレグジットの一因であったことを証明する。現在先進国の民主政治の中で、経済のグローバル化に対する不満の噴出が大きな問題となっているが、不満がどのような形をとり、どのような結果になるかは、歴史制度論者が主張するように各国の政治制度や過去の政治紛争によって左右されることを示す。 研究方法としては事例研究のアプローチを採用し、EUの単一市場や通貨統合の進展に対して、サッチャー率いる保守党とその他の政党勢力がどのように反応し、欧州統合に対する態度を変化させていったか、その際イギリス政党政治の再編がどのような役割を果たしたのか、特定することを目指す。政府内や政党間・政党内での議論を分析するため、イギリスや大陸ヨーロッパの公文書館で利用可能な一次資料を幅広く活用する。イギリスに関する調査結果は、他のEU加盟国についての比較研究と照合することでベリファイする。 平成30年度は、関連図書・論文の収集に努めると共に、ロンドンのナショナル・アーカイブにおいてサッチャー政権期の政府史料の収集を行い、その分析に着手した。加えて、6月にブリティッシュ・アカデミーではリチャード・トイ(エグゼター大学)と日英の新自由主義的経済改革を比較する発表を行い、有意義な反応を得た。また9月の英・国際関係史学会ではサッチャー政権による国際資本移動自由化に関する発表を、12月にストラスブールで行われた国際学会では金融規制をめぐる英・EU間の対立がブレグジットに与えた影響についての発表を、それぞれ行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に在外研究で一年間にわたってイギリスに滞在したというアドバンテージを生かし、想定以上に多くの史料を入手することができた。平成30年度も夏季休暇中に資料収集にあたった。具体的には、イギリスの公文書館・図書館で研究テーマに関連する様々な一時資料を入手した。二年間を合計して、ロンドン・キューにあるナショナル・アーカイブにおいて、首相個人文書・大蔵省文書・外務省文書など政府資料のコピー(写真)を約7万ページ分収集した。ケンブリッジ大学チャーチルカレッジ付属公文書館では、サッチャー首相個人の文書や、首相の経済アドバイザーであったアラン・ウォルタースの文書を収集した。ベルギーのブリュッセルにおいては、EUの公文書館で1986年に調印された単一欧州議定書に関連する史料を入手することができた。 収集したこれらの史料の内容について順次分析を進め、その成果を三回の国際学会で発表し、有意義な反応を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度・平成30年度にに引き続き英国とブリュッセルで史料の収集を行いつつ、入手した史料の分析に努める。英国の政府文書の公開はいわゆる「三十年ルール」から「二十年ルール」への移行期にあり、最近では一年間に二年分の史料が新しく公開されることも多い。それらを収集するためには、毎年度渡航することが不可欠となる。平成31年度まで3年間にわたって史料収集を行うことで、サッチャー政権期に作成された政府文書全てとメージャー政権初期の文書が入手できるため、主たる研究対象となる期間全てをカバーできる。研究計画の変更は現段階では必要ない。
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Causes of Carryover |
6月に行った国際学会発表につき、開催主体のブリティッシュ・アカデミーから渡航費用の支援を受けることが出来たため、当初の予定より支出が少なくなった。来年度資料収集のために国外滞在する期間を予定より延ばすことで支出する。
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