2017 Fiscal Year Research-status Report
Protecting Child Refugees in UK: Is the Politics of "De-Securitisation" possible?
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17K03607
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難民 / 代弁者 / 安全保障化 / ガバナンス / 脱・脅威 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、3年間の研究期間の初年度にあたる。そのため、脱・脅威化の理論形成に向けた準備として、ヒトの国境を越える移動と安全保障化に関する研究動向をまとめることを第1の目的としていた。 そこでまず、人の国境を越える移動の制度化について、関西大学の紀要に英語論文を発表した。当該論文においては、受入国内で政治的権利が誓約されているため発言することが難しい難民および移民にかわって、国際機関(UNHCR,IOM,ILO)およびNGOが、代弁者となる意図や戦略、目的について明らかにした。さらに移民政策学会が編集する『移民政策のフロンティア』に、EU離脱交渉過程を進める英国の入国管理政策について「イギリスとEU」と題した論文を発表した。また、静岡県立大学国際関係学研究科附属グローバル・スタディーズ研究センター主催〈グローバリゼーションの反動による他者排斥型ナショナリズムの研究〉連続公開セミナーにおいて、「『イギリス人』を問い直す:Brexit後の移民選別システムの再編成」(平成29年12月11日)という題の口頭報告を行った。 加えて、研究課題について広く知見を収集し議論を進めていく目的で、国際政治学会の年次大会において部会(「『帰属の政治』の現状と展開ー理論と実証研究の対話を通じて」)を企画した。この企画を通じ、難民を含めた国境を越える人々の受け入れについての実証と理論に関する第一人者と交流し、最先端の研究動向を学んだ。平成29度に引き続き、平成30年度の国際政治学会年次大会においても部会の企画を実施する予定である。 初年度の調査として、英国において1週間程度の資料収集を行った。特に英国の難民受け入れ政策の変遷について、オックスフォード大学図書館及び英国国立公文書館において資料収集すると同時に、オックスフォード大学での講義セミナーに参加し研究動向を学んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は研究計画を変更し、ジュネーブの国際機関を訪問するのではなく、英国での資料収集を実施した。 英国のEU離脱交渉は当初の予定通りには進んでいない。国境を超える人の移動に関する取り決めは離脱交渉の中心課題の一つである。英国はシェンゲン規約には加盟していないが、難民の受け入れに関するダブリン規約の加盟国である。そのため、英国の難民受け入れ政策は離脱交渉の中身と密接に関連している。そこで現段階では、英国在住のEU市民およびEU在住の英国国民の身分資格および権利をめぐる協議の動向を注視し、具体策が明らかになるのを待たざるをえない。そのため平成29年度は国際機関の訪問を見送り、代わりに英国での研究に専念した。 平成30年度は離脱交渉の進捗がある程度見込めるため、計画通りに研究活動を進めていく事を想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は研究期間の第2年度となる。本年度は、「脱・脅威化」課程において受入国政府が直面する問題について調査する。そのため、ヒトの移動と安全保障についての研究に取り組んでいる、英国の専門機関(Centre on Migration, Policy and Society、Oxford University)において、資料収集を行う(1週間程度を予定)。同時に、平成29年度に引き続いて、英国国立公文書館での資料収集及び関係機関における調査を実施する。 また、日本国際政治学会で部会もしくは分科会を企画し、政治学や国際政治学の専門家と意見の交流を進めることで、多岐的な研究成果へとつながるように努める。加えて、平成29年度に続き、静岡県立大学国際関係学研究科附属グローバル・スタディーズ研究センター主催の研究会で口頭報告をする予定である。これ以外にも、国内外の研究会で報告する機会を探し、隣接分野の専門家からの知見を得るよう努める。
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Research Products
(2 results)