2018 Fiscal Year Research-status Report
Protecting Child Refugees in UK: Is the Politics of "De-Securitisation" possible?
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17K03607
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民 / 難民 / 保護 / 英国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年3月末に英国がEUから正式に離脱することになっていた。そのため2018年及び2019年はEU離脱後を見込んた移民及び難民制度改革が実施されると想定されていた。しかし2019年5月時点で離脱期限は延長され、その延長期間すら決定されていないのが現状である。 当初の予定では、2019年度は、英国における国境を越える子ども難民の受け入れ制度の現状、とくに英国国内における「保護」に焦点をあてて調査をするはずであった。しかし英国の現状を鑑み、入国管理および難民保護制度の歴史的展開と英国における受容についての研究分析を実施した。 研究成果の公開という点では、まず第1にブリスベンで開催された国際政治学大会(International Political Studies Association)の年次大会(2018年7月24日)で口頭発表を行った。当該報告の中で、21世紀英国における入国管理政策と対外政策の相互関係とそれが国民性に与える影響について発表した。研究成果の第2としては、ブリスベンでの報告を研究ノートにまとめ、今後の研究の理論的枠組み作りを試みた(関西大学の英文紀要に発表)。 くわえて、研究課題について広く知見を収集し議論を深めていく目的で、国際政治学会の年次大会において2つの部会を企画・実施した(「保護する実践と統治の現実ーコミュニティー・都市・自治体」および「『分断』を再考する」)。いずれも難民を含めた移住者の受容をテーマとしている。また昨年度に続き、静岡県立大学交際関係学研究科附属グローバル・スタディーズ研究センター主催の連続公開セミナーに参加した。 さらに教育貢献としては、神戸大学大学院国際協力科において、難民保護の概念の変容をテーマとした講義(トランスナショナル特別講座)を秋学期に担当した(計15回)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国のEU離脱交渉が当初の予定通りに進んでいないだけでなく、2019年5月時点で離脱期日が延期となったまま確定すらしていない。国境を越えるヒトの移動に関する取り決めは離脱交渉における重要な課題である。英国はシェンゲン規約には加盟していないが、難民受入を取り決めるダブリン条約には当初から加盟している。 初年度の時点では2018年度中に離脱課程が終了していることを想定していた。そのため初年度に実施する予定であったジュネーブでの難民関連の国際機関の訪問を延期し、代わりに英国での資料収集を実施した。しかし2018年度中においても交渉は難航し、英国政府が離脱後の入国管理政策案を暫定的に発表したのが2018年12月であった。結果として2018年度もジュネーブでの調査を実施できなかった。 しかし代わりに、英国のEU離脱後をにらんで国境管理政策の対応を進めるアイルランドで資料収集をおこなった。くわえて英国-アイルランド国境線や北アイルランドを訪問し、共通通行地域(common travel area)に関する知見を得た。 2019年度は本科研の最終年度に当たる。しかし2019年度中に離脱交渉が完了するかすら未確定である。そのため離脱後の展開を見据え、本年度も入国管理及び難民関連制度の現状及びこれまでの発展過程に関する調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本科研の最終年度に当たる。しかし2019年度中に離脱が完了するかどうかさえ未確定である。そのため、「現在の進捗状況」で記載したように、研究計画を変更せざるをえない。当初の研究計画では、英国の難民保護制度、とくに子ども難民に焦点をあて、受入と排除の概念の変遷を明らかにする予定だった。現状ではこのまま計画を進めることは困難である。代わって、EU離脱交渉後の展開を見据え、英国の入国管理及び難民保護関連制度の現状及びこれまでの発展過程に関する調査を実施する。 そのため2019年度の方針としては、第1にこれまでの2年間の研究成果を英語及び日本語で執筆し発表する。第2に本務校である関西大学にて研究会を開催し、当該分野の研究者と意見交換を行う。第3に海外の研究会にも可能な限り参加して、海外の専門家の最新の知見を得ることで、研究成果のさらなる発展を目指したい。
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Research Products
(2 results)