2019 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の統戦外交と戦犯処理に関する基礎研究―台湾統一・少数民族工作と寛大方針
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17K03609
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
大澤 武司 福岡大学, 人文学部, 教授 (70508978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中華人民共和国 / 戦犯処理 / 統一戦線 / 中国国民党 / 満洲国 / 蒙疆自治政府 / 台湾統一工作 / 少数民族工作 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間第3年目となる2019(令和元)年度は、所属機関が熊本学園大学外国語学部から福岡大学人文学部に変わり、教育・研究環境が大きく変わった年となった。研究費の執行方法の変更など、戸惑う点もあったが、本研究は「基礎研究」であるため、第2年度に続き、すでに調査・収集済みの公文書、研究書および論文、関係史資料、回想録、インタビュー記録などの整理・分析を進めた。 特に今年度注力したのは、国民党戦犯を管理した「撫順戦犯管理所」(中華人民共和国遼寧省撫順市)の所長を長年務めた「金源」氏の詳細な回想録の訳出・出版作業であった。原題『奇縁―一個戦犯管理所長的回憶』(解放軍出版社)はこれまでも数次にわたって邦訳が出版されてきたが、その内容については専門家による十分な監修がなされてこなかった。今回は、金源著・大澤武司監修(研究代表者)・中川寿子訳というメンバーで桐書房より『撫順戦犯管理所長の回想―こうして報復の連鎖は断たれた』を近時、刊行予定である(新型コロナウィルス感染拡大の影響で若干、出版が延びている)。 なお、2019年9月に中国で発生した日本人研究者拘束事案の影響、さらには新型コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた中国大陸および台湾での調査実施が実現しなかったため、旅費の残額分を2020(令和2)年度に繰り越して執行することとした。なお、本研究を発展させた新規の研究課題「現代中国の対台湾『統一戦線』戦略の史的研究―国民党戦犯処理の思想と史的展開の解明」(基盤研究C・研究代表者・課題番号20K01540)が新規に採択されており、引き続き研究を展開していくこととなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「基礎研究」として、先行研究や関係者の回想録、関係史資料を基礎資料として、文献整理や文献翻訳などの基礎作業を中心に進めている。研究代表者個人による作業が中心であり、当初の計画に基づき、文献・史資料の調査・収集、整理・翻訳・分析作業を地道に進めている。なお、上述の通り、本研究課題を発展させた研究課題が新規に基盤研究Cとして採択されており、本課題の研究期間における3年間の作業を通じて、特に「国民党戦犯」処理に特化して研究を進めていくという方針を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に採択された研究課題「現代中国の対台湾『統一戦線』戦略の史的研究―国民党戦犯処理の思想と史的展開の解明」(基盤研究C・研究代表者・課題番号20K01540)に接続させながら、より詳細な分析作業につなげらえるよう、基礎研究を進めていくことを計画している。 なお、新型コロナウィルス感染拡大の影響により調査・研究交流の出張が当面は困難であることが予想されるので、本年度より勤務先大学(福岡大学)の附属図書館に導入したCNKI(中国語論文検索・ダウンロードシステム)を活用しながら中国大陸で刊行されている多数の最新の関連研究を調査・収集し、この翻訳・整理作業を積極的に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2019年9月に発生した中国における日本人研究者拘束事案や2020年2月以降の新型コロナウィルス感染拡大の影響により、中国大陸あるいは台湾への渡航調査が延期となったため。
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