2017 Fiscal Year Research-status Report
Effects of troop contribution toward peacekeeping: casualty sensitivity and outbreak of coup d'etat
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17K03611
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
久保田 徳仁 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 准教授 (00545858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 平和維持活動 / クーデタ / 政治体制 / 要員提供 / 比較政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は国連平和維持活動(PKO)の要員提供国への短期、および中長期的影響を分析することにある。具体的には、①国連PKOの犠牲者のデータセットを構築し、国連PKOの犠牲者を生むシステマティックな要因を明らかにすること、②①のデータセットと分析結果を用いて犠牲者が生じた際の各国の対応から犠牲者敏感性の構造を明らかにすること、③要員提供が政治変動(特にクーデタ発生)をもたらす(または防止する)傾向について明らかにすること、を目的としている。 平成29年度はこのうちの③を特に重点的に研究した。1991年から2007年の期間の全世界を対象とした計量分析により、PKOへの要員提供は民主主義国ではクーデタの成功率を下げ、非民主主義国ではクーデタの成功率をあげるという結果が得られた。6月には日本比較政治学会にて発表を行い、計量分析の結果を公表した。 日本比較政治学会における発表をさらに洗練化し、当学会の査読ジャーナルである『比較政治研究』に投稿、10月に採択、12月に刊行された(久保田徳仁「PKOの要員提供がクーデタの発生・成否に及ぼす影響:―1991~ 2007―」『比較政治研究』第3号(http://www.jacpnet.org/05journal/abstract_03-02.html#03))。 もう一つの柱である①に関しては地道にデータの入力を進める一方、分析視角や研究の位置づけについて、より明確化させるため他の研究者との情報交換を行っている。平成30年3月には早稲田大学地域・地域間研究機構主催のワークショップ「PKO研究ワークショップ:平和維持活動の派遣と要員提供―歴史的変遷と諸相― 」に参加し、「PKOの部隊形成手続きとDPKO軍事部門」という題目で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PKOとクーデタの関係については研究初年度でありながら学会発表、査読論文公刊へとつなげることができ、予想以上の成果を上げることができている。この分野についてはデータセットとモデルを改善し、理論面での洗練化を進めて海外の学会での発表や雑誌への投稿を考えている。他方研究計画で考えていたアフリカ独自のダイナミズムに関しては研究が不十分である。また、比較政治研究者を中心として韓国で開催する予定だった研究会が29年度中には開催されず、延期となっている。本研究の進捗としては進んでいるが、予算執行の面でやや遅れがみられる。 PKOの犠牲者に関するデータセットの作成は8割がた進められたものの、クーデタの分析に予想以上に注力したため、予定よりやや遅れ気味である。必然的に当該データセットを用いた分析もやや遅れている。 予想より進んでいるプロジェクトと、予想よりやや遅れているプロジェクトがあり、全体的に見た場合、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
クーデタとPKOの分析に関しては平成30年度中に海外の学会発表と雑誌投稿を目指して進める予定である。また、派生的な生産物として、比較政治の教科書の一章としても記述する予定となっている。 平成30年度はPKOの犠牲者に関するデータセットの作成にできるだけ注力したいと考えている。海外の競合するプロジェクトも現れており、時間的な競争も始まっている。本研究のオリジナルな点である敵対行為による犠牲のタイプの細分化(砲撃、IED、待ち伏せ攻撃、戦闘、その他)は、国連が29年12月に公表した報告書の中で集成分析ながら実際に行っており、他の研究者も同様の着眼点を持つことは容易に想像できる。日本の他の研究者の協力も仰ぎながらデータセットの公表と簡単な分析までをできるだけ速やかに進めていきたい。31年3月に開催されるアメリカ国際関係学会(International Studies Association)での発表を想定している。
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Causes of Carryover |
電子計算機の費用などが予想よりやや安く済んだので物品費が5万円ほど残余している。加えて学会、研究会参加旅費として計上していた22万5000円が研究会延期のため残余している。当該研究会は今年度または来年度に開催される予定であるため、執行されるものと考えている。
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Research Products
(3 results)