2017 Fiscal Year Research-status Report
保有資産に異質性がある社会における最適金融政策の研究
Project/Area Number |
17K03616
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平口 良司 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (90520859)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 金融政策 / 一般均衡 / 資産分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的は、人々の保有する資産が、収益率において不確実であり、かつその値が人々によって異なるような動学的一般均衡モデルを構築することである。そして第二の目的は、そういったモデルの中で、望ましい経済政策の在り方、、具体的には中央銀行の設定する金融政策の望ましいルールを考えることである。具体的には、連続時間重複世代モデルを用いて分析した。モデルにおいては、毎期毎期一定の死亡確率に直面している経済主体を考え、彼らが消費・貯蓄を決める際、資産形成の手段として、収益率が時間とともに異なるようないわゆる危険資産と、収益が時間とともに変わらない貨幣をともに持つことができると仮定した。各経済主体は、おのおのの効用を最大にするように両資産の保有状況を決める。そして中央銀行は、貨幣の供給量の増加率を決めることができると仮定して一般均衡を求めた。本モデルにおいては、インフレ率が低くなると、人々は貨幣保有の機会費用を減らすことができるが、その分危険資産の保有が減り、経済全体の発展を阻害するというトレードオフがある。現時点では、モデルにおいて、定常状態を示す均衡が唯一存在することを示すことができた。そして、生産性等いくつかのパラメータに条件を置くことで、定常状態における社会厚生関数を貨幣供給量の増加率についての関数として表現できた。しかしながら、現時点ではそれらの依存関係を完全に導出するまでには至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における目標は、各経済主体が保有資産収益率において異質な場合のモデルの構築と均衡の導出であった。定常状態に限った分析ではあるが、定常均衡を求めることができたため、順調に研究が進展していると判断できる。また、パラメータにいくつかの仮定をおくことで、定常均衡での社会厚生関数を導出することができたため、今後の研究の道筋がついたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、定常均衡における経済主体の社会厚生、具体的には初期時点における経済主体の期待効用を、より一般的な形で計算したい。そして、その社会厚生が、金融政策、つまり貨幣供給量の増減によりどのように依存するのか、そして社会厚生を最も高める金融政策の在り方について研究したいと考えている。特に、名目利子率をできるだけ低く抑えるべきというフリードマンの考え方が本モデルにおいて成立するかを分析していきたい。そして各大学にて研究発表をし、フィードバックやコメントを受け、さらによりよい研究にしていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本来は、研究において、社会厚生関数を完全な形で導出し、金融政策にどのように依存するかを数値計算する予定であり、その際ソフトウェアを購入する予定であったが、昨年度、均衡の発見に時間がかかり、購入を行わなかった。また、研究発表を行う予定であったが、結果が出ないこともあり、見送った。次年度において支出を行いたい。
|