2018 Fiscal Year Research-status Report
保有資産に異質性がある社会における最適金融政策の研究
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17K03616
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平口 良司 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (90520859)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 内生的成長 / 資産分布 / 定常成長 / 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、保有資産の初期値に違いがあるような経済主体から構成される内生的成長モデルを構築し、資産分布の異質性と経済成長率のかかわり方、そして金融政策の効果について研究を行った。本論文では、経済主体の労働供給を内生化し、より一般的な効用関数のもとで分析を行った。
モデルにおいては、最終財、中間財を作る企業、および研究開発に携わる企業から構成されており、労働供給は最終財の生産及び研究開発のいずれかにかかわるという設定になっている。研究開発を行うことで、中間財の種類が増え、それを通して最終財の生産を増やすという、ローマーモデルに近い設定となっている。しかし、元のモデルとは、資産の異質性の考慮の点、そして労働供給の内生化の点で異なっている。この場合、初期の資産の分布は労働供給量に影響を与え、それが研究開発の程度にも影響を与えるという構図になっている。
具体的に導いたことは、以下のとおりである。初期資産の値の異質性が経済成長率にどのような影響を与えるかは、経済主体が労働供給からどのように不効用を得るかに依存しており、場合によっては、資産分布が不平等になればなるほど、技術革新の度合いが低下し、経済成長率に悪影響を与えるということを示した。そしてその場合、名目利子率をプラスにする拡張的金融政策が経済成長率に一定程度プラスの効果を与えるが、拡張的金融政策の度合いが一定規模を超えると流動性の低下を通して労働供給を減らし、結果経済成長率に悪影響を与えるということを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資産分布の多様性を考慮した内生的経済成長モデルを構築し、その中で定常成長経路における経済成長率と資産分布の形状との関係を明示的に表すことができたという点では研究は順調に進展している。また、その中で、金融政策、具体的には名目利子率と経済成長率の関係も比較的簡単に導くことができ、その関係に資産分布がどう影響しているかをに示すことができたので、当該研究は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては次の2通りを考えている。まず、社会厚生関数を考え、この社会厚生関数の値を定常成長経路化で計算し、それが金融政策からどのような影響を受けるか考えたい。具体的には定常状態での社会厚生が、名目利子率にどのように依存するのか考えたい。 次に、資産の異質性に関するショックが時間とともに変わるケースを考えたい。今までは資産の異質性が初期資産の値のみであった。実社会は資産収益率などに常に個別ショックが働く。モデルに資産収益率に関する個別ショックを考え、その中で望ましい金融政策について考えたい。
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Causes of Carryover |
モデルの構築および結果の導出に時間がかかったため、研究結果に関する日本各地での研究発表を次年度に繰り越すことにした。そのため、次年度使用額が発生した。
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