2019 Fiscal Year Research-status Report
賃金分布と資産分布の決定メカニズム:労働サーチ理論を導入したマクロ経済分析
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17K03620
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
荒渡 良 同志社大学, 経済学部, 准教授 (20547335)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 所得分布 / 政府支出 / 国債 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度には主にマクロ経済における所得分布の形成に注目し,以下の三つの研究を行った. 一つ目は政府支出のサイズの変化が所得格差と経済成長率に与える影響についての理論的研究である.分析の結果,能力の異質性が十分に大きい場合には政府支出と経済成長率の関係は平坦な逆U字型になるという,先行研究では指摘されてこなかった結果が得られた.これは,政府支出のサイズが極端な水準にない場合には,政府支出サイズの変化は所得分布には影響するものの,経済成長率にはあまり影響しないことを意味する. 二つ目の研究は世代間の投票率格差と財政政策のサイズに関する研究であり,高齢化が各国における財政政策の形成と,その下で決まる所得分布に与える影響を理論的に明らかにしようとしたものである.分析の結果,老年世代の投票率の上昇は,政府支出のサイズと国債発行額に非単調な影響を及ぼすことが確認された.これは,老年世代の政治的影響力が大きいほど財政赤字が大きくなるわけではないという,先行研究にはない結果である. 三つ目の研究は国債発行限度ルールの形成に関する研究である.国債発行限度に関するルールは税率や政府支出のサイズに直結するものであり,所得分布の形成に重要な役割を果たす.本研究では家計が双曲割引を持つために時間非整合性に直面しており,各時点において最適な国債発行限度ルールが異なるという状況を考えた.分析の結果,双曲割引の度合いが少し変化するだけで,最適な国債発行限度ルールが非連続的に変化する可能性があることが示された. 以上の研究成果はいずれも査読付き国際学術雑誌掲載を目指す.一つ目,三つ目の研究成果は現在投稿準備中であり,二つ目の研究成果は査読付き国際学術雑誌 International Tax and Public Finance に掲載が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に関する研究が順当に進んでおり,かつ成果も出ているため.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度以降は最終年度にあたるため,これまでの研究成果を全て学術論文の形にまとめ,査読付き国際学術雑誌に投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
購入を予定していた物品の価格変動のため,若干の残額が生じた.次年度使用額分については,研究実施に必要な文房具等の購入に使用する予定である.
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