2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03624
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 組織の経済学 / コミュニケーション / 発言 / 退出 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文"How to Really Open the Door: An Economic Analysis on the Risk of Voice"を作成した。この論文では「発言」におけるリスクをモデル化した。従来の組織論では組織内の「発言」を阻害する要因として「無益の認識」と「リスクの認識」が議論されている。筆者の既存論文"Cheap Talk with an Exit Option: A Model of Exit and Voice"が前者を表現しているのに対し、当該論文は後者に着目した論文である。
具体的には、上司が単なる不運と部下の怠慢とを区別できない状況を想定する。これが1回限りの状況だと、部下に努力を促しつつ、正直に組織の状態を報告させるような仕向けることは不可能である。そこで、この論文では以下のような動学的状況を考える。雇用関係はまず良好な状態から始まる。ある確率でショックが起こり、雇用関係は危険な状態に移行する。この状態からは、ある確率でさらに悪い状態に至り、雇用関係は破壊される。しかし部下と上司が努力をすると、ある確率で良好な状態に戻る。ただし、上司は危険な状態にあることを観察できないので、上司の努力を促すためには部下は状態を正直に報告する必要がある。
以上のような状況での上司にとっての最適賃金契約を論文では求めている。得られた具体的な結果として、部下に市場で得られるよりも高い価値をもたらすような賃金契約を提示することによって、部下にも雇用関係の価値を内部化させることが出来、努力と報告の両方を促すことが可能になることが明らかになった。またハーシュマンの議論とは異なり、このような組織内の状況では退出オプションが意味のないことも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者の既存研究を踏まえた新しい結果が得られている。この意味において、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
組織内条件の分析については、メッセージの受け手の私的情報がコミュニケーションに及ぼす影響についてより一般的な環境における分析を行う。
一方、市場条件の分析については今までに新たに得られた分析結果を統合する。
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Causes of Carryover |
特に海外で研究報告する機会が余り得られなかったため、旅費について持ち越し分が増えてしまった。今年度は海外で研究報告を行う機会が得られた。
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Research Products
(1 results)