2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03626
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東 陽一郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (80327692)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 誘惑 / 自制 / 意思決定理論 / 公理的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は誘惑に関する学習を伴う意思決定モデルを公理的に特徴づけるだけでなく、他の行動様式に従う主体の学習も特徴づけた。この研究の当初は、誘惑に不確実性を持ち、自分の誘惑に関する情報を得た後にベイズ改訂を行う主体を考えていた。本年度は、事後的な後悔を考慮して行動する主体が、自分の事後的な選好に関しての情報を得て、事後的な選好に関するベイズ改訂を行う研究も行った。そして、このタイプの主体の行動の特徴づけを得た。これは、事後的な後悔を予見して意思決定する主体も、誘惑に不確実性を持つモデルと同じく、自分の選好に関する不確実性を持つ主体だからである。 本年度は、二つのモデルを個別に分析するのではなく、これらを含む一般のモデルでの分析を行った。先行研究のRiella(2013)では、Dekel, Lipman, and Rustichini(2001)による主観的不確実性のモデルに単調性の仮定を課して分析を行っているが、単調性を必ずしも満たさない主観的不確実性のモデルの特殊ケースを考えた。この特殊ケースは、誘惑に不確実性を持つモデル、事後的な後悔を予見するモデル、単調性を満たすモデルを含んでいる。というのも、これらのモデルは主観的不確実性を持つモデルに適切な公理を課すことで特徴づけが可能だからである。本年度は、この主観的不確実性を持つモデルの特殊ケースで、主体が自分の事後の選好に関する情報を得てベイズ改訂を行うことに対応した行動を特徴づけた。具体的には、誘惑に不確実性を持つモデルに対応したクラスと、事後的な後悔を予見するモデルに対応したクラスでは、ベイズ改訂を行う主体の行動が異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、誘惑に不確実性を持つモデルと、事後の後悔を予見して行動を行うモデルを含む一般のモデル(主観的不確実性のモデルの特殊ケース)での分析を行った。誘惑に不確実性を持つモデルでのベイズ改訂の特徴づけは終わっているが、一般的なモデルの特徴づけはまだ改善の余地があると考えられる。このため、研究成果をワーキングペーパにまだしておらず、論文を国際査読雑誌に投稿するまでにはいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、誘惑に不確実性を持つモデルと、事後の後悔を予見して行動を行うモデルを含む一般のモデルでの分析を行った。この一般モデルは、Dekel, Lipman, and Rustichini(2001)の主観的不確実性のモデルの特殊ケースである。この特殊ケースは、誘惑に不確実性を持つモデル、事後的な後悔を予見するモデル、単調性を満たすモデルを含んおり、分析の対象として適切であると考えられる。しかし、Dekel, Lipman, and Rustichini(2001)の関数形を特殊な形に特定化しているという問題点があると考えられる。特殊な関数形を考えることは、事後的な選好に関する情報を得たあとに主体がベイズ学習を行うことの特徴づけに関して、余分な仮定だからである。今後は、より一般的な関数形を考えて分析を行うことを考えている。
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Causes of Carryover |
ワーキングペーパーの作成と国際査読雑誌に投稿するためには英文校正が必要であるが、まだ行っていない。また、研究発表のための見込み額の全てを使用したわけではないが、引き続き研究打合せも必要である。次年度には、英文校正、研究発表、研究打合せなどに次年度使用額を利用する予定である。
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