2019 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンの経済学説を中心とした北欧的社会科学理論の研究
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17K03643
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤田 菜々子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スウェーデンの経済学説 / ストックホルム学派 / スウェーデン学派 / 北欧学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
北欧社会科学理論の研究として、前年度に引き続き、スウェーデンの経済学説の歴史的展開、ならびにそれと政治的・社会的背景との関連性を中心として、研究を進めた。 とりわけ本年度は、スウェーデンにおける経済学の黎明期(17・18世紀)における学説の展開とその政治的・社会的背景の関連について諸文献を渉猟し、大まかな流れを把握・記述することができた。中央銀行であるリクスバンクの成立過程、スウェーデン初の経済学者ベルチの存在と意義などを知ることができた。また、19世紀後半から20世紀初めにおけるスウェーデンの貨幣的経済理論の急速な発展について、ダヴィッドソン、ヴィクセル、カッセル、ヘクシャーといった世界的にも有名になったスウェーデン人経済学者たちの理論や政策提言、彼らの人間関係や論争内容について研究し、考察をある程度整理することができた。さらに、1920年代後半から1930年代におけるリンダール、ミュルダール、ヘクシャーなどからなる若手経済学者集団「ストックホルム学派」の活動について、追加的文献を読解することにより、大恐慌後の世界経済情勢、スウェーデンにおける社会民主労働党への政権交代過程、「失業委員会」を通じた経済政策提言との関連において理解を深めた。 文献調査として東京大学と京都大学に出向き、両大学が所蔵する国内唯一のスウェーデン経済に関する貴重な資料(古書および「失業委員会報告書」)を利用することができた。研究計画当初にはこれらの資料の存在を知らなかったため、予期せぬ発見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究実施計画に沿って、研究を進捗させ、論考をまとめることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
スウェーデンの経済学説の歴史について、引き続き通史的に考察をまとめていく。すでに20世紀初めまでについてある程度まとめたので、続けて「ストックホルム学派」の形成以降について研究を整理していく予定である。 当初の研究計画ではスウェーデンをはじめとする海外での文献調査を考えていたが、新型コロナウィルス感染症問題が生じたため、計画変更が見込まれる。しかし、当初は予期していなかった貴重な資料が国内で見つかったため、それらの利用で当初の目的はかなり達成されるようにも考えている。
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