2020 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンの経済学説を中心とした北欧的社会科学理論の研究
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17K03643
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤田 菜々子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スウェーデンの経済学説 / ストックホルム学派 / スウェーデン学派 / 北欧学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
スウェーデンの経済学説の展開について、スウェーデン社会との関係性を中心に、研究を継続的に進めた。 当年度はとりわけスウェーデン経済学者の「第2世代」から構成された「ストックホルム学派」の形成と展開を集中的に研究した。まず、「ストックホルム学派」の形成には、「第1世代」と「第2世代」の中間世代にあたるバッジェの存在が重要であったことを見出した。次に、リンダールやミュルダールの経済理論について研究し、理論面での同学派の中核が動学的方法の探究にあることを認識した。さらに、オリーンについて新規文献を多く渉猟した。オリーンは国際貿易理論家でデンマークに在職していたが、1930年にスウェーデンに帰国してからリンダールやミュルダールの研究に合流し、ミュルダールと並ぶ中心的人物となった。 また、政策面においても「ストックホルム学派」の特質を考察した。重要な場となったのが1927年失業委員会である。その活動概況や報告書・付録・覚書の作成過程、内容について調査を進めた。大恐慌の影響を受け、スウェーデンでは1932年に社会民主労働党への政権交代が起こった。社民党員で新内閣の大蔵大臣となったウィグフォシュは「新しい財政政策」を掲げ、ミュルダールに1933年政府予算案付録――後年に「ケインズ以前のケインズ的政策」を示したものと評価される――の作成を命じた。これに関してケインズやイギリス経済学の動向との比較についても考察を進めた。 以上のように新たな研究を進める一方、これまでの研究年での研究成果を整理して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症問題の発生・持続により、出張を伴う文献渉猟や研究成果発表は満足にできていないが、およそ当初の研究実施計画どおりに研究を進められており、これまでの研究年の成果も発表できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
スウェーデンにおける経済学説の展開を通年的に考察できてきたので、当初の研究実施計画をやや超過して、現代にまで考察を進めるつもりである。およそ「ストックホルム学派」の考察は終わりの見通しがついたので、第2次世界大戦後から現代までのスウェーデンにおける経済学と社会の関係性について新たに考察することが必要であるが、これまでの他研究の成果も活用することができると考えている。研究成果は書籍として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症問題の発生・持続により、国内・国外出張が不可能になったため。また、同問題への対応のため、文献等の物品購入が低調になったため。 次年度は、文献等の物品購入を多くし、翻訳や校閲を依頼することなどを計画している。
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