2022 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンの経済学説を中心とした北欧的社会科学理論の研究
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17K03643
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤田 菜々子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済学説 / スウェーデン / ストックホルム学派 / 福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの年度の研究を踏まえた成果の発表に重点を置き、単著として『社会をつくった経済学者たち――スウェーデン・モデルの構想から展開へ』名古屋大学出版会、2022年9月、を刊行した。当該研究者は長らくG.ミュルダールの経済学説の研究を行うとともに「資本主義の多様性」研究を進めてきたが、このたびの単著では、スウェーデン人経済学者全般に研究対象を広げ、スウェーデン社会の成り立ちを経済学史研究のアプローチから解明しようと試みた。 具体的には、リンネやベルチといった「大国の時代」におけるスウェーデン経済学史の黎明期の様相に始まり、ダヴィッドソン、ヴィクセル、カッセル、ヘクシャーといった「第1世代」の経済学者たち、リンダール、ミュルダール、オリーン、ハマーショルドといった「第2世代」(ストックホルム学派)の経済学者たちの活動を明らかにし、「スウェーデン・モデル」がいかに形成されてきたかを論じた。また、とりわけ大恐慌期のストックホルム学派について、イギリスのケインズをはじめとするケンブリッジ学派やLSEにおける経済学者たちとの国際人物交流を私信などから明らかにすることで、経済学史研究において長年議論されてきたケインズ革命とストックホルム学派の関係性について新たな分析を与えた。スウェーデンの経済学者たちは公共論議に積極的に参画してきたことが特徴的であり、社会民主主義対自由主義の政策論争を通じて、歴史が進行し、スウェーデン・モデルが形づくられてきたと結論づけた。 以上の単著作成の派生的研究成果として、スウェーデンの1930年代における少子化論議からの現代日本への示唆、「人への投資」概念に関わる論考なども、一般読者向け雑誌に寄稿した。また、関連する内容について、学会・研究会発表を6回ほど行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症問題の継続により、海外資料調査などは引き続き不可能であったが、その分を国内の資料の発見などで埋め合わせすることができ、当該研究期間を延長しつつも、単著をまとめて刊行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画期間を延長しており、単著を刊行することもできたので、その成果を普及させることを重点的に行う予定である。また、次の研究テーマとして、1930年代ヨーロッパ少子化論議の研究を考えているので、それに結びつくような文献や資料を渉猟していくつもりである。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症問題の継続によって、予定額よりも旅費などが下回ったため。今後は、主に研究成果発表と新たな文献・資料の渉猟のために使用する計画である。
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