2017 Fiscal Year Research-status Report
ケンブリッジにおける経済学の黎明──組織と人的ネットワークからの接近
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17K03649
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
久保 真 関西学院大学, 経済学部, 教授 (30276399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケンブリッジ / ヒューウェル / ケトレ / 経済学方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、2017年度(初年度)を資料調査に充てるとしていたが、実際にはその他業務との兼ね合いから、ヨーロッパに渡航しての現地資料調査を行うことができず、ヨーロッパから様々な媒体で取り寄せた資料を分析するにとどまった。その意味で本年度の研究実績は限定的なものではあったが、本研究課題が対象とする時代のケンブリッジにおける経済学の有り様を知る手がかりとなる、重要な人的繋がりを見出すに至った。 具体的には、経済学に関わったケンブリッジ出自の知識人たちの多く──例えば、ヒューウェル、マルサス、ジョーンズ、バベッジ──と、大陸の統計学者ケトレとの人的繋がりである。従来、こうした繋がりはさして重要視されて来なかったけれども、彼らとケトレとの書簡のやりとりの中には、前者の知識人たちが関わった経済学の方法的刷新というプロジェクトに込められた彼らの思惑が、かなり明瞭に読み取れる。特に、1833年ケトレが英国を訪れ、イギリス科学振興協会の統計部会設立に立ち会うこととなった背景として、ヒューウェルの役割が極めて大きかったことが、以前よりも明確に論じることが可能となった。十分な分析を終わらない段階ではあったけれども、こうした資料を紹介しそれらのもつ重要性を説くペーパーを執筆し、ヨーロッパ経済学史学会第21回大会で報告した(Shin Kubo, 'Reforming Political Economy using Statistics: The Words and Deeds of Quetelet and Whewell', The 21st annual conference of the European Society for the History of Economic Thought, 2017年5月20日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画遂行がやや遅れていると評価する。 所期の計画では、初年度(2017年度)の夏期休業中あるいは春期休業中にヨーロッパでの資料調査を行う予定であったが、研究代表者の抱える他業務との兼ね合いから、これを実施できなかった。このことを最大の理由として、研究計画遂行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が2018年度秋より一年間の在外研究に従事する予定であるが、初年度(2017年度)に予定していたが実施できなかったヨーロッパでの資料調査を補うべく、この期間に徹底的にこれを行うことを計画している。また、在外研究中、まとめた研究成果をできるだけ多くの機会に口頭報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に行った発注(史料の修復)の一部が、2018年度の納品となったこともあり、次年度使用額が生じたが、速やかに次年度使用額が消化できる。次年度使用額および翌年度分請求助成金は、主としてヨーロッパでの史料収集を実施する際の旅費に充てるものとして、その使用を計画している。
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